『肆』 歴歴 最も生命が輝いていた、あの時代 数多の生命が煌めいた、あの目まぐるしい日々―― 緑の原を飛び越え、空色の視界、その先へ 真っ青な天上に、銀朱の大翼と燻る黒炎の模様を掲げ 眼下の獲物はどれも鈍足、取るに足りず くの字を描く自慢の爪で、その頭を地に叩き伏せてみせよう 「さあ、今日も狩りの始まりだ」 透き通る蒼の彼方、目指すは恐らく天の果て 色濃く息吹くは蒼の軌跡、くすんだ黒炎の模様と共に 眼前の獲物はどれも小物、恐れるに足りず 弧の字を描く驚異の翼で、その体躯を地に撃ち落としてくれよう 「さあ、今日も狩りの始まりだ」 鬱蒼と茂る草木は熱を帯び 鬱屈と俯く者は足取り重く 見よ、黒銀の鋼が一度でも宙に煌めけば 疾く、凍てつく翼が雨と風を喚ぶだろう 錆びついた眼光は歴戦の古獣の証 風翔れば如何な生命も為す術なし 『さあ、今宵の狩りを終わらせよう』 獰猛な血潮を脈々と継ぎ、衝動のままに食餌を求め 絶対的な支配下の縄張りで、己が鋭き牙鳴らし 雪原、一転して緋に染まれ 砂原、流転して畏怖に変われ 「さあ、今日も狩りの始まりだ」 狡猾な見識は闇へと沈め、暗がりに紛れて知識を研ぎ 紅く煌めく星の下、己が鋭き翼走らせ 樹海、研ぎ澄ます殺意を聞け 湿地、磨ぎ終えた双刃を濡らせ 「さあ、今日も狩りの始まりだ」 水面を飛び出す、空を仰ぐ 夏の空、白い綿雲、見上げた刹那 海原にて大口開き、ひらりと青の体躯を委ねれば 浸れる万能、溺れる真髄、愛しき雷、未だ遠く 「さあ、今日も狩りの始まりだ」 この身を無双と謳う者あり、この眼を狩人と称する者あり 森より出でて渓谷踏み越え、月光ひとつ、角ふたつ 背に迎えた友等、白き体毛、雷あらたか 武人を招く手、狩り狩られ 「さあ、今日も狩りの始まりだ」 黒き艶めく石剛健に、灼熱極寒、足取り軽く ざわめき輝く意思豪胆に、共生の果て、新手の狩り手 自慢の拳は己が武器、支え、駆け抜く拠りどころ 爆ぜる境地をとくと見よ 「さあ、今日も狩りの始まりだ」 身を裂く痛苦、意を呑む苦鳴 混沌より生まれ、天より堕つるもの 大翼は痛みを降らせる濃色、双角は悼みを招く修羅の色 命じられるまま、散らばれ、蔓延れ、其が分身よ 「さあ、今日も狩りを終わらせよう』 身に連なる兇器は、千もの妄執 秘境を離れ、見下ろしたのは焼ける砂 彼の爪は決意を切り裂き、彼の鱗は希望を挫く 泣き叫べ、黄金騎士の御通りぞ 「さあ、今日も狩りの始まりだ」 一振りの刃、青塗りの太刀 速歩、揺らめかせ、振りかざす一閃 真っ向より来る愚か者など恐れる理由もなし 逆立つ焔、己が激情の赴くままに 「さあ、今日も狩りの始まりだ」 七色の翼、極彩色の煌めき 接敵、睨めつけ、ねじ伏せる一閃 暗がりを知らぬ覇者にくれる慈悲欠片もなし 逆巻く雷、己が苛烈の赴くままに 「さあ、今日も狩りの始まりだ」 青くたたえる温もり、煙る細氷 巨影、伸び上がり、振りおろす一閃 領域に踏み込むものなどに道譲る義理もなし 吹き荒ぶ雪、己が慈愛の赴くままに 「さあ、今日も狩りの始まりだ」 薄桜の調べ、移りゆく四季の視界 舞踊、ため息、爪弾く一閃 血臭に溺れるものなどに振り向く憐憫もなし 浄めの色彩、己が心の赴くままに 「さあ、今日も狩りの始まりだ」 白銀連ねる鎧は星屑の衆 赤熱宿る体躯は滑翔の糧 見よ、一世ひとときで流るる此の舞台に於いて 疾く、一片の星さえ瞬きのうちに消えるだろう 万物を睥睨せし鋭き眼は古獣の証 変幻の槍振るえば摘まれぬ者亡し 『さあ、今宵の狩りを終わらせよう』 一歩、摘まれた者の多くを想い 二歩、其の恨み何処までも深く 三歩目、折られ倒れた我が誇り何時何処 襲歩よ、憤怒と鏖殺の狭間を行き交って この蒼く染まりし亡骸は長き時代を巡り抜いた証 折れ角と嗤う者など跡形なく蹴散らしてくれよう 「さあ、今日も狩りの始まりだ」 五色の龍が這った後、悠然と過るもの 幾つもの死が辿り着いた、終わりの園 見よ、棘と茨で覆われしこの忌々しき身体こそ 疾く、抗い足掻く愚者どもの墓標となるだろう 結晶煌めく地に座す姿こそ古獣の証 勝利の音を吹く英雄唯の一人も無し 『さあ、今宵の狩りを終わらせよう』 凍てつく新世界に彷徨うもの 償いの選択に立ち止まるもの 見よ、銀盤の孤高の貴公子が冷徹に見やる先 疾く、放浪者さえ氷霜に撒かれ平伏すだろう 白くけぶる気配は氷刃司る古獣の証 白く煌めく七色に惹かれぬもの無し 『さあ、今宵の狩りを終わらせよう』 追い求めたのは何者か、恋い焦がれたのは何者か 奪われたものは風に呑まれ、逃したものは雷に消ゆ 夜すがら百もの竜の啼きごとを聞け 募る怨み辛みは紫紺の焔で飲み干してみせよう 「さあ、今日も狩りの始まりだ」 ――さあ、新たなる獲物の御通りだ！ |
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Monster Hunter My Love 2021 wani Presents, 【 この物語はフィクションです 】 ＜目次＞ 壱 オープニング 弐 イントロダクション 参 世界に挑めと獰猛な眺望 【！】伍 唄 【Next】 陸 エンディング 漆 （ボーナストラック） |