取扱説明書  ▼「読み物」  イラスト展示場  小話と生態  トップ頁  サイト入口 



モンスターハンター カシワの書 上位編(2)

 BACK / TOP / NEXT




磨かれた武具は見ていて気持ちがいい。一枚一枚研磨された竜鱗、棘に、光沢が戻された生き物の皮。それだけに留まらず愛用の武器の柄に刃、装飾の類も。
全ては、相手をつとめてくれたモンスターと脈々と継がれる加工技術によるものだ。胸は躍るし、ぴんと背筋を伸ばしたくなってくる。
素材ともども加工屋に預けたそれらは、高温で定着する鎧玉――モンスター素材に馴染む特殊な鉱石や別素材の効果が上乗せされ、更に強固に質を変えた。
そういった熟練の業を貸してくれるのは、自分の場合はベルナ村の加工屋がそうだ。世話になり始めてから結構な時間が経つ。

「おいさっ! 今回の必要金額はこんなモンだぜ。オメーさんはずっと働き詰めだったから、研磨一往復分オマケしといてやるってなもんよ!」

一見強面だが、彼は研究熱心な職人だった。話を重ねてみると、持ち込む素材の説明はもちろん向く加工向かない加工、用途についても丁寧に教えてくれる。
相棒であるクリノスも入手した素材のことを尋ねるとあれこれ教えてはくれるのだが、武具に関する知識は彼の方が上だろう。
ガンナー訓練の合間に再研磨を依頼しておいた防具がぴかぴかになっている様子を工房の隅に見出して、カシワは竜人に大きく頷き返した。

「悪い、助かる。それにしても、まさか弓の訓練が終わるまでずっと没収されたままなんて思わなかったぞ……」
「そうでもしねえと、オメーさんもそのまんまの格好で上位に行っちまいそうだったからな」

破顔する竜職人に、後輩狩人は何も言い返すことができない。
ガンナーに適した装備は剣士専用のそれとは少々造りが異なる。ハンター業界では昔ながらの常識だ。
新たな防具を作ろうにも手持ちの素材では心許ない……悩むカシワに加工屋は「ガンナー用に応用できるぜ」と初期装備のベルダー一式を勧めてくれた。
一方で剣士用防具はマイハウスから回収、調整が施され、そのまま加工屋に保管されていたのである。そのお陰で弓の修練に専念することができたのだ。

「どれどれ……おっ? なんか、前よりツルッツルしてるな」
「ツ……旦那さん。それ多分、鎧玉のコーティングですニャ」
「おうよ! 前に就任祝いにオメーさんにやったやつに、オメーさんが火山から採集してきた分。言われた通り、全部強化に充ててあるぜ」
「そうか、ありがとうな。にしても、キラキラしてるのに重さはそんなに変わらないんだなあ。不思議な感じがするよ」
「そこがオイラたち加工屋の腕の見せ所ってなもんよ。そうそう、あとは『こいつ』もだったな」

鎧玉をメインに、手持ちの素材を注ぎ込んで強化した雄火竜、怪鳥、砂竜素材の馴染みの防具。そこに新たに、斬竜の剣を打ってもらった。
……はじめ、あのディノバルドの素材を渡すのをカシワは僅かに躊躇した。
彼女の最後が最期であったし、骸の龍との決戦の際に見つけた片割れのことを思えば、あっさりと手放すことになんとなく申し訳なさが先立ったのだ。
加工屋はカシワの話を最初、黙って聞いていた。沈黙に耐えかねて身じろぎしたとき、もさもさの髭が動いて開口一番、笑われた。

『オメーさん、そんなこと言ったらその斬竜のつがいに怒られるぜ』

尾刃を掲げ、行使し、あるいは盾にし傷つきながらも奮闘した武人。その誇りは「二足歩行」が理解し得るものではないと、加工屋は目尻を緩めた。
鼻で笑われたというよりは苦笑に近しい笑みだ。きゅっと眉根を寄せ固く口を結んだ後輩狩人に、竜職人はカラリと笑う。

『ま、オメーさんみたいに「覚えてくれている」奴がいるってのも……悪くねえと、オイラは思うぜ』

結局、カシワはディノバルドの一部を彼に託すことにした。カタログを広げて話をしているうちに、それらは青黒く艶めく片手剣に変貌することが決まった。
「灼炎のプロミナー」。古代林の巨大ゼンマイに似た形状の盾と、斬竜の背中を思い出させる小剣。陽光にかざせば、紺とも群青ともとれる色彩が煌めいた。

「わあっ……旦那さん、これ、すっごく綺麗ですニャァ」
「ああ。俺もそう思うよ、アル」

晴天の下で青い焔が燃えている。振り向いた視線の先で、ベルナ村の加工屋は口端をニッとつり上げた。

「おうよ、大事にしてやんな。オメーさんの誇りを懸けた代物なんだろうからよう」
「……!」
「ニャイ! 頑張りますニャ!!」
「って、アル。お前のは防具しか用意してやれなかったから……」
「――プニャゥ。ご利用、ありがとうございましたニャ。またお越し下さいませニャ!」

会話に横から紛れ込むのは、端材の加工を担当したオトモ武具屋の鍛冶アイルーだ。ばっちりなタイミングで話に混ざられ、狩り人たちは顔を見合わせる。

「今日から上位ランクに挑むんだろう? オメーさんたちなら安心して任せられるってなもんだ。行ってきな!」
「行ってらっしゃい、ハンターさーん。頑張ってね、応援してるよ~!」
「プニャゥ。ケチャワチャは火属性にとても弱いのですニャ。ディノバルドの武器なら安心ですニャ」

加工屋、武具屋、はてにはオトモ武具屋にまで盛大に声援を送られ、オトモともどもふらふらと赤面しながら飛行船乗り場に急ぐ。
出発準備を済ませていた先輩狩人に首を傾げられ、カシワは見ないふりをしながら新たな狩り場行きの便に乗り込んだ。






「あんたさ、モドリ玉持ってる?」

見慣れた鼻歌混じりの操舵員の背中を見ながらクリノスが言う。一瞬何を言われたのか分からず、カシワは目を瞬かせた。
途端に騎士と同じ色の瞳が睨みつけてくる。ただし彼女の場合、ユカと違い常日頃からピリピリしているというわけではないので、そう萎縮せずにいられた。
いつの間にか、彼女の装備はいつものスパイオシリーズではなくなっている。カシワにとって見慣れた防具――実父が好んだ、ハンター一式に変わっていた。
いつ、装備を変えたのだろう……僅かにもやもやとした疑問が浮いたが、後輩狩人はこの謎を無視することにした。
なんの話だと聞き返すより早く、女狩人の方はアイテムポーチを担いでさっさと船尾の方へ行ってしまう。足元の袋を慌てて掴み、カシワもその背を追った。

「あら、カシワ様。準備万端のようでニャにより。流石でございますわ!」

小型艇を二隻、飛行船から切り離す作業を続けながら客室乗務員のエリザベスが笑いかけてくる。
……準備万端とは。嫌な予感が全身を駆け抜けて、後輩狩人はたじろぐように後退った。ふと振り向いたクリノスが意味深な笑みを投げてくる。

「ねえ、カシワ。集会所の受付嬢さん、今日も綺麗だったよねー」
「ん!? い、いきなり何言い出すんだよ!?」
「あらカシワ様、彼女のような方がお好みニャのですか」
「エリザベスまで! そ、そんなこと今はどうでもっ……」

ガタンと軽快な、それでいて重苦しい音があたりに響いた。滑車とワイヤーをキリキリと鳴らさせて、気付けば小型艇は青色の中に浮かんでいる。

「じゃあ確認。受付嬢さん、上位クエストは下位とどう違う、って言ってたか覚えてる?」
「え?」
「わたし、出発前に言ったよね? 慣れるまでモドリ玉持参した方がいいよって。持ってきてないなら自業自得だから」

小型艇は二隻。自分とアルフォート、そしてクリノスとリンクのペア分だ。
慣れた様子で乗り込んだ女狩人が操舵員に頷きつつ木箱に腰を下ろす姿を、カシワはただ黙って見送った。

「いつ合流できるか分かんないし。もしあんたが先にケチャワチャ見つけたら、サイン出すなりしてよねー」
「え、おい? クリノス?」
「アルフォート、もしものときはボクに合図を送るニャ-。ボクならモンスターの気配を察知する確率、八十パーセントニャ!」
「ニャ、ニャイ。リンクさん……」

相棒とそのオトモを乗せた小型艇が飛行船から離れていく。一度だけ、クリノスはぱっと後輩狩人に振り向いた。

「まあ、せいぜい頑張ってー。わたしはあんたと違って『マップは頭に入ってる』から」
「おっ、おい、クリノス! どういう……」
「駄目そうだなーと思ったら、サイン飛ばしてよー。健闘を祈るぅー」

出立時のロハンに倣ってか、シュピッと先輩狩人は片手を額に当て敬礼の構え。ぽかんと口を開けたカシワだが、その尻を容赦なくエリザベスが押してくる。
されるがまま小型艇に乗り込んで……後輩狩人はここでうろたえた。下位のクエストでは、飛行船は必ずベースキャンプに自分たちを送り届けていたはずだ。
だというのに上位クエストを受注すると明かした途端「飛行船に付属する小型艇での送迎に切り替える」とスタッフ全員に言い渡された。
これはおかしい、何故、どうして。疑問が顔に浮いていたのか、舵を握りながらロハンがちらと視線を投げてくる。

「カシワサーン。集会所の受付嬢サン、何も言ってなかったー?」
「ロハン! お前、何か知ってるのか!?」
「言われたはずだよー? 上位クエストはねー、下位みたいに必ずキャンプから出発できるわけじゃないってことー」
「んな!? なんでだよ、おかしいだろ……っ」
「そりゃ、危険度が桁違いだからね~。送り迎えのスタッフに何かあったら、それこそ大問題になっちゃうでしょ?」

金属音が跳ね、体が傾いた。どたんと情けなく尻餅をついた直後、カシワとアルフォートは飛行船がぐんぐん遠ざかっていく様を見て震え上がる。

「遺跡平原での狩猟は龍歴院じゃー上位以上でないと許可が出ないからさー。下位ハンターはダメっていうのにも何か理由があるんでしょ。がんば~!」
「う、うわ、そんなっ……俺はこんなところ初めてだしっ、地形だって何も!」
「カシワ様、アルフォート様! 見て、歩いて、実際に体験した方が覚えも早いというものですわ! 無事のお帰りを祈っておりますわ!」

ニャイニャイと、客室乗務員たちの賑やかな声援に見送られるまま小型艇は降下していった。
カシワは気が気でない。「遺跡平原」。地形の把握はおろかどんなモンスターが出るのか、どういった素材が入手できるのか、自分はまだ何も調べていない。
地図もなしに放り出されるとは思ってもいなかった! 慌てふためくふたりを余所に、小型艇はさっさとこじんまりとした水場の近くに着陸する。

「着いたぜ、ハンターさん。頑張ってな」
「……駄目元で聞いていいか。あんた、地図とかそういうのは」
「持ってないねえ。ここらにはガーグァしかいないから大丈夫さ。気をつけてな」

送迎分の燃料とそれなりの飛行能力しか持たない小型艇に乗り合わせた操舵員は、ワハハと笑いながら激励を飛ばした。
すぐさま遠退く影を見上げて、カシワは誰にともなく嘆息する。あたりを見渡せば、男の言うように野生種の丸鳥がのたのたとくつろいでいる姿が見えた。

「ニャイ……旦那さん、これからどうしますニャ?」
「アル。うー……参ったな、地図もそうだけど携帯食料もないんじゃなあ」

肉焼きセットはないのですニャ、持ってきてないなあ、ふたりはトボトボと歩き出す。
かといってガーグァに八つ当たりするのもな、ぼやきかけたところで、カシワははっとして立ち止まった。
見上げた先、水場の奥に赤褐色の見慣れぬオブジェが鎮座している。人間か、あるいは古の神か。険しく厳つい顔つきの、巨大な遺物だった。

「わあ……旦那さん、これって」
「ああ。『遺跡平原』って言ってたよな、こういうことか……」

いつからここにあったのだろう、顔面をモチーフとした遺物は堂々とした振る舞いでそこにある。彼の真下には、水源と思わしき奥地に続く細道もあった。
気にはなったが、今は狩猟依頼のまっただ中だ。誘惑を振り払うように頭をぶんぶん振って、後輩狩人は一度岸辺に戻る。

「なあ、アル」
「ニャイ。なんですかニャ?」
「ああいう遺跡……遺物っていうのか。あれって、他にもまだあると思うか」

ぱちりと青色の眼が瞬き、雇用主を見上げた。その顔がぱっと明るく輝く。どうやらアルフォートは、こちらの言わんとしたことを瞬時に理解したらしい。

「旦那さん、もしかして気になってますのニャ?」
「ああ! お前は?」
「ニャイ! 実はボクも見るのは初めてですニャ、気になりますのニャ!」
「だよな? 気になるよな? じゃあケタワタ探しも兼ねて、狩り場を全部見て回らないとな!」

ふたりの目は、もはや感動と興奮を抑えきれないと言うように期待と好奇で煌めいていた。その場で跳ねる勢いでカシワが先陣を切る。

「ニャイー……あっ、旦那さん! ケタワタじゃなくて、ケチャワチャですニャァ!」

慌てて、アルフォートはその背を追った。水場をゆっくりと眺めて堪能していたからか、すでに金時計の針が一つの時字に差しかかろうとしていた。






遺跡平原は、ベルナ村より南、ほど近い場所に位置する広大な狩り場だ。
黄金に色づく野草に陸地を覆われ、その周辺には樹海や清流が広がる。北や東の方角には荒々しい山脈が連なっていて、色彩の対比が見るものを圧倒させた。
平原を吹き抜ける風は件の金色の葉を勢いよく吹き上げ、平地を進む来訪者の視界を過ぎてはまた、遠いどこかへと情緒ごと連れ去るばかり。
空を仰げば、猛禽類か飛竜の類か、大翼を広げた生き物が風に身を任せて次々と飛び交っていくのが見える。

「アル! こっちだ、こっちにも遺跡があるぞー」
「ニャイ、旦那さんっ、待ってくださいニャー!」

そんな緩急に満ちたこの土地には、他の狩り場には見られないものが点在していた。名称の由来にもなった「遺跡」である。

「凄いな、これ全部石造りか」
「レンガ……のように見えなくもないですニャ」
「どっちにしたって大したもんだよ、誰かが作ったってことだろ?」
「ニャイ。きっと、ボクたちが生まれるずっとずっと前のお話に違いないですニャ」

カシワとアルフォートは、竜の巣が鎮座する天空の山岳地帯を抜け、またツル植物を使って崖と平地の高低差をよじ登り、平原のあちこちを見て回った。
ツル植物で形成された天然の床板、金や深紅に萌える広葉樹と見どころはたくさんある。その中でも特に二人が足を止めたのは、やはり赤褐色の遺物だった。
水場エリアで見られたもの以外にも、建築物と思わしき背丈の高いもの、足場の残骸と思わしき立方体など、様々なところにそれらはあった。
平原を抜けていく清々しい風が、冒険心をよりくすぐる。後輩狩人とそのオトモは、半ば狩猟依頼のことを失念していた。

「……なあ、結構歩いたよな?」
「旦那さん? まさか、もうお腹が空い……」
「そ、そんなこと言ってないだろ!? 大丈夫だ、まだ!!」

「まだ」とのたまうカシワの表情には、どことなく切羽詰まったものが見え隠れしている。
アルフォートは、先ほどポーチに突っ込んだ特産キノコを盗み見て逡巡した。獣人ならいいかもしれないが、ハンターはキノコだけで腹が満たせるだろうか。
答えは、否。雇用主は魚類こそ好んで食すが、狩りの現場となれば話は別だ。何より、今はターゲットのケチャワチャすら見つけられていない。

(クリノスさんとリンクさんは……今、どこにいるんですかニャァ)

開き直ることにしたのか、カシワはこちらに見向きもしないで先に進んでいく。追いかけようとして、オトモメラルーはふと足を止めた。

「! アル、何か……」

刹那、さっと後輩狩人が振り返る。つられるようにして視線を動かして、アルフォートは息を止めた。
周囲を遺物に囲まれた、金や深紅に萌える広葉樹の森。その奥、まばらに生える高原野草の陰から突如として見知った姿の巨体が姿を現した。
……軽快なリズムと足踏み、頭部に生やした金の冠羽、赤皮と艶やかな緑の鱗に覆われた体。しなやかな棘つきの尻尾。
見知ったというより見慣れた個体と称した方が正しい。「それ」はカシワたちと目が合うや否や、けたたましく天に向かって吠えた。
毎度お馴染み、跳躍のアウトローこと、鳥竜種ドスマッカォである。

「……ドスマッカォだよな?」
「……ドスマッカォですニャ」
「なんでだ?」
「たっ、確か、狩猟環境『不安定』って……書いてあったような気がしますニャ」
「……書いてあったか」
「書いてありましたのニャ、ボク覚えて――ニャギャー!?」

毎度お馴染み、毎度恒例、ドスマッカォはトントンと足取り軽く近寄ってくるや否や、尾棘で砂を抉り、尻尾でバランスを取りながら器用に立ち上がった。
そのまま両脚で蹴りつけてくる。もちろん、狩り人たちも大人しく蹴られているほど未熟ではない。ぱっと身を翻して跳狗竜と距離を取る。

「一応確認するぞ、アル! あれも上位個体、なんだよな!?」
「たっ、たぶんそうですニャー! ボクっ、今のちょっと掠ったけど痛かったですニャァ!!」
「大丈夫なのか!?」
「かっ、カスリキズだから全然平気ですニャ! でもっ、でも、心の準備がまだでしたのニャー!!」

すでにオトモは涙目だった。ぱっと打ち立ての得物を抜ききって、雇用主は彼を庇うようにしてその場に立つ。
ふんふんと鼻息を荒くするドスマッカォは、着地し直して再び威嚇した。上半身を低くして嘴を前に突き出し、ここは俺の縄張りだとばかりに怒鳴り散らす。

「久しぶり、いや、そうでもないのか。なあ、俺たちはまだ下位装備なんだ――」

深紅の灯火と青色の焔。二つの色彩が交差する美しい刃を、カシワは跳狗竜に見せつけるようにして横倒しにし、刃文を向けた。

「――だから悪く思わないでくれ。『お前も』できるだけ手加減してくれよ。頼むぞ」

指先が刃をなぞる。火の粉、次いで、灼熱の炎が宙に生まれた。すぐさま腕を引き、いつもの定位置に構え直す。
再び咆哮したドスマッカォに向かってハンターは駆け出した。「逃げ出す」か「飽きてくれる」まででいい……いつの日か、誰かにそう言われたことがある。
力任せでなく、弱点を撫でるように。あるいは、肉と肉の繋ぎ目に刃を差し入れるように。下位とはいえ、経験を活かさない手はどこにもない。
黒瞳が閃く。振り抜かれた青黒く艶めく焔は、躊躇なく跳狗竜の体躯に噛み付いた。





 BACK / TOP / NEXT 
 UP:23/02/04