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滴り、零れ落ちるもの(楽園のおはなし2章SS) BACK / TOP |
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「ニゼル=アルジル。狩りに出るぞ」 起き抜けだ。したがって、ニゼルの頭は当然まるで回っていなかった。 目を覚ますと同時、既に準備万端といった体の騎獣が床上にサムライ座りをしている。 「……えーっと? とりあえず、おはようシリウス。いきなりどうしたの?」 頑として動く気配のない、真面目くさった顔の青年に苦笑いを返した。 唯一の救いは、隣の親友がまだ眠りの世界に出かけているという事くらいだ。 もし彼が起きていようものなら、不機嫌全開に説教タイムに突入していたかもしれない。 鳥羽藍夜の寝起きの悪さは、琥珀さえ恐れる代物だというのに……巻き添えは御免だと遠回しに主張する。 しかし、当のシリウスは、言われて初めて自分が突拍子もない行動をとっていた事に気付いたらしかった。 何度か目を瞬かせて、彼はああ、と独りごちる。 「狩りだ。少し、急ぎで新鮮な魔獣の肉が必要なのでな」 否。反省している素振りは、全くない。 「うーん、色々言いたい事はあるけど。俺、戦う術持ってないよ? あんまり力になれないと思うけど」 「構わん。お前ではなく、お前の護符とやらを通じて協力者を募る予定だ」 「直接サラカエルに頼むのは駄目なの?」 「馬鹿を言うな、断られる事は目に見えているからな」 俺を介して手伝わせるのも、それはそれで問題ありそうな気がするけど……ニゼルは口をもごもごさせた。 背後で親友が寝返りを打ち、うーん、と唸る。起こしてしまいそうだと、羊飼いは騎獣を連れて慌てて部屋を出た。 「あのね、サラカエルから嫌み言われるの、結局俺になるんだよね。火種を自分から蒔くのはちょっとなー」 「案ずるな。お前はチーズを食えば元気になるのだろ。里の在庫から選りすぐりのものをやるから我慢しろ」 「案ずるなって案じて下さいって話だよねそれ! 誰情報なのそれ! 俺だって怒るときは怒るからね!?」 「お前はトバアイヤによく似ているな。細かい事を気にしすぎると、人間は将来髪の毛がなくなるらしいぞ」 事情は知らないが、シリウスが何やら異様に浮き足立っている事だけは確かだ。ニゼルは今度こそ嘆息する。 否、断じて否。いくら契約主とはいえ、騎獣の考えている事まで見透かすようになったらそれはそれでお終いだ。 プライバシー大事、ゼッタイ。 一人うんうんと頷いて、しかしあれこれ突っついてみたい欲求とも格闘し、ニゼルは一角獣を連れ宿の一階へ降りた。 「あっ、ニゼルさん。おはようございますっ」 「おはよー、アン。ねえ、シリウスが朝からすっごくはしゃいでるんだけど、理由知らない?」 「おい、ニゼル=アルジル。はしゃいでいるとはどういう意味だ」 「いやはしゃいでるよね? ウキウキワクワクだよね? 違うとは言わせないからね?」 「ち、違うに決まっているだろう。馬鹿を言うな」 「いや、バカみたいにはしゃいでる馬もどきはそっちでしょ」 双方のやりとりを見ていたアンブロシアは、あっ、と短く声を上げて走り去っていく。 何事かと棒立ちになるふたりの前に、彼女は机上から持ち出したヒトの世の流行を纏めた雑誌を広げ、見せつけた。 ニゼルもシリウスも、無言で開かれたページを覗き込む。アンブロシアはこれでどうだと言いたげの顔だった。 「ホワイトデー! ですよね! シリウスさんっ」 「ホワイト……ああ、琥珀へのお返しかー」 「ち、違うぞ。俺は断じて、そんなものに興味はない」 雑誌の中身はなんじゃらほい。シリウスはわざとらしく咳払いをしたが、ニゼル達はそれを軽やかに無視する。 見開きのページには、バレンタインイベントの続編にあたるホワイトデーの特集がどどんと組まれていた。 好意のある相手に贈るチョコレート、そしてそれへのお返し。それがこの二つの行事の概要だ。 女性好みであろう菓子や小物が、写真と共に載せられている。見出しには「恥じらいを捨てよ男性諸君!」とあった。 「そういえば、琥珀、シリウスにチョコクッキーあげてたもんねー。いやー、青春だね!」 「あ、でもこの場合、真珠ちゃんには渡せないんでしょうか。ほら、貰っていないわけですから」 「来年に持ち越しって事でいいんじゃないかな。っていうか、真珠も珊瑚もまだ好物とか曖昧だしねー」 「うーん。そうですね、生まれたての仔にチョコレートやお菓子をあげすぎて、虫歯になったら大変ですし」 「そ、怖いんだよ虫歯って。それに消化を悪くしたらもっと大変だし。こういう事は、大人達が注意しなくちゃね」 「……そうか、俺の言い訳は不要か、そういう事だな」 きゃっきゃと楽しげに話に花を咲かせる二人に、シリウスは降参の嘆息を吐く。 「……っていうのは半分冗談として。琥珀はお菓子よりお肉! だもんね、それはシリウスだって悩むわけだ」 置いてけぼりを喰らっていた騎獣は忙しなく目を瞬かせたが、ニゼルは変わらず平常運転だった。 いつの間にか、アンブロシアも雑誌を片付けて地域別の地図を引っ張り出している。 「手伝う気はあったのか、ニゼル=アルジル」 「そりゃあるでしょ。あー、俺は藍夜に何渡そうかなあ。何気に高いお菓子貰ってるんだよねー」 「ならなおさら、シリウスさんと出掛けてみてはどうでしょう。帰りに町の書店に寄るのが一番だと思いますよ」 三人はそれぞれ苦笑し合い、早速思いつく限りの道具を鞄に詰め込んで準備を進めた。 旅人が好む素材で織られた丈の短いマントに、悲劇の天使が彼女なりの加護を与えてくれる。 これなら空だって飛べるかも、ニゼルは嬉しそうに笑って礼を言った。 「じゃ、行ってくるね、アン。藍夜が起きたら、」 「ふふ、大丈夫ですよ。最近、藍夜さんのお説教を流せる裏技を身につけたんです。気をつけて下さいね」 ホワイトデーのお返しに、生肉を調達する為の狩りに出る……なんとも、シリウスらしい発想のような気もする。 地図を広げて大体の目的地を定めたニゼルは、原型に戻った騎獣に跨がって宿を後にした。 事前に、琥珀が美味いと口にして止まない肉の種類を、簡単に調査しておいたらしい。 ツッコミどころは満載だったが、羊飼いはあえて口を閉ざしておく事にする。 ……一方、アンブロシアに藍夜の雷――ただし雷霆を用いたものではない――が落ちたのは、それからすぐの事だった。 彼女の言う落雷の回避方法というのが、藍夜の対天使であるサラカエルにそれとなく助けを求めるというものであり、 実のところ、最終的には後々ニゼル本人に嫌みが飛ぶ形になるという悲しい事実を、当の羊飼いが知る由もない―― 「――やあ、それで、どんな言い訳をしてくれるか楽しみにして来たわけだよ。辞世の句だとか、言っておきたい事はあったかな」 ニゼルは、上下逆さまになった視界の真下で殺戮がにこにこと笑う様を見る。 なんて事はない、彼の放ったワイヤーで足首を捕らわれ、宙ぶらりんになっているだけの話だった。 周囲に点在する「首なし」の銀毛の狼、シルバーウルフと称される魔獣の遺体も相まって、シュールな光景すぎる。 ああ、ともうう、とも言えない微妙な声を返して、羊飼いは自身の騎獣の姿を目で探した。 「えっと、あー、うん、シリウスー? 大丈夫?」 「……すまん、今は話し掛けないでくれ」 「そりゃそうだろうさ、穢れが駄目だと自白しているのに、よりによって僕を助っ人に喚ぶんだから。自業自得さ」 視界の端に、草むらの中に屈む白髪が見える。無理もないだろう、辺りは血の臭いが充満していた。 鼻で笑う殺戮を窘めるように、ニゼルは小さく嘆息する。ぼちぼち頭に血が上ってきた。 腹筋に力を込め、少しでも重力に逆らおうとしたところで、鋼糸が解かれる。 「!? っいった! ちょっと、サラカエル! 降ろし方!!」 「アッハハ、間抜けに相応しい、情けない悲鳴じゃないか。流石だね」 吊された木は、地上からそう高くない地点に枝を伸ばしていた。 これといった怪我を負わずに済んだのは、流石は殺戮の銘持ちといったところか。 だからって納得出来ないけどね――打ちつけた腰を嫌みたらしくさすっていると、サラカエルが手を差し出してくる。 憮然とした表情のまま、ニゼルはその手を借りて、引っ張り上げられる形で立ち上がった。 「しかし、シルバーウルフか。また、随分と大げさな獲物に目を付けたもんだね」 「サラカエル、知ってるの?」 「そりゃね。魔獣にしては良い肉で、臭みもないし。好まれるけど、何より生息地を捜し当てるのが困難だからね」 何故か。何故か殺戮は一頭のシルバーウルフを胴と首を揃えて開けた場所に安置し、空を仰ぐ。 何事かと倣うように頭上を見たニゼルは、急に陰を指した青空に首を傾げた。 「ハルピュイア、ヒトの言葉で言うならハーピーかな。こいつは、供物の分ってわけさ」 強い羽ばたきの音がする。視線の先に、これまで一度も見た事のない生き物の姿が複数あった。 上半身はヒトの裸体、下半身は鳥という、絵本かおとぎ話の中に出てきそうな生物だ。 ざわめく森のように豊かな髪は、飛行する度に大きく揺れる。顔とむき出しの乳房は青白く、酷く不気味に見えた。 どれもが恐ろしい形相でこちらを見下ろしている。餌を求めて徘徊する魔物でさえ、こんな表情はしないだろう。 無数のトリ型の羽根が宙に舞い、それらは甲高い耳障りな奇声を上げて、ぐるぐると供物の上を旋回した。 ここから出ていけ、暗にそう言われたような気がして、ニゼルは静かに目を伏せた天使に困惑の眼差しを注ぐ。 「え、ハル……何?」 「魔獣だよ、あまりじろじろ見ない方がいい」 勧められるままに頭を下げ、二の句を待った。しかし、彼に答えを与えたのは殺戮ではない。 「いや……魔獣というよりは、古くから在る神獣の一種だな」 「シリウス! 具合、大丈夫?」 「ああ……しかしこの数は。もしやこの区域は、ハルピュイアの縄張りだったか。失態だな」 「縄張り? サラカエル、どういう、」 「静かに、お察しの通り彼女らの縄張りさ。少し行ったところに糞尿があったから、警戒しておいて正解だった」 「ふ、糞尿? マーキングみたいなものかな……」 「ふん、牧場勤めをしていただけあるじゃないか。ラグナロクの影響で、彼女らも地上に住処を移したんだろうね。 獲物や食い物を捜し当てるのが、どの神獣よりも上手いとは聞いていたけど……今は逆らわない方が身の為かな」 眼前の銀の毛並みが、あっという間に赤く染まった。地上に降りてきた鳥娘らが、鋭い鉤爪で狼の腹を割いている。 毛を毟り、返り血も気にせず手掴みで肉を喰らう光景に、ニゼルは凄いね、と呟いたきり棒立ちになっていた。 「いいかい、神獣っていうのは、神々と同系列の生き物として産まれた生き物で、魔獣なんかとは格が違うんだよ。 敬意を払わなければ呪われる、なんてのが暗黙の了解で……今回、縄張りに侵入したのは僕達の方だったからね」 そこの間抜けな一角獣も神獣の一種だけどね、嫌みを飛ばしたサラカエルは、不意に娘達へ恭しく頭を垂れる。 つられるように深く礼をしたニゼルは、どこかで聞いた気がする話だ、と目線を上げないまま瞬きした。 けたたましい、鳥とも人間の女ともとれる奇声が重なり合う。連鎖し、木霊し、脳を直接揺すぶられたようだった。 ぐわんぐわんと激しい耳鳴りがして、ふらついたところを横にいたシリウスに支えられる。 「……お許しを得られたようだ。もう、頭を上げても問題ないよ」 天使に言われるままそっと視線を動かすと、ぐるぐると輪を描きながら、娘達が上空に登っていく様子が見えた。 お許し……彼女らの許可なく獲物を持ち帰ろうものなら、どんな災禍が降り注ぐか分からないと殺戮は嘆息する。 珍しく、サラカエルの笑みは引きつっていた。ニゼルがもう一度上を見ると、既に鳥娘の姿は小さくなっている。 残されたのは、食い散らかされたシルバーウルフの残骸だけだった。率先してそれを土に埋め、丁寧に埋葬する。 人間ほど身勝手で不思議な生き物もいないね、殺戮は鼻で笑い、言うな、白毛の一角獣はそれを窘めた。 「だから、食前食後に『いただきます』と『ごちそうさま』って言うんですー。藍夜だってちゃんと言ってるよ? 俺だって矛盾してるなーって思うけど、他の命を分けて貰って生きてるんだから、尊ぶのは当たり前の話でしょ」 喰うか、喰われるか……言ってしまえば、世界の在り方など初めはそうであった筈なのだ。 立ち去った鳥娘達が残した美しい鷲の羽根を一枚拾い上げ、羊飼いは視線を周囲に走らせる。 「さあ、帰らなきゃ。待ってるひとが、いるんだから」 捧げられた若い銀狼にも、既に狩られた銀狼達にも、帰りを待つものがあったのかもしれない。 ホワイトデーという行事自体は知らなくとも、互いに食物を贈り合う、尊重し合う何者かがあったのかもしれない。 その命を分けて貰い、己らの糧とするのだ。羊飼いは、おもむろに黄金の杖を抜き、天に掲げて声を上げた。 「『汝らが眼をつけた狩り場の獲物、確かにこの身に分けて頂く。感謝する』」 その詫びの一言が玲瓏と響いた直後、甲高い無数の鳥の鳴き声が森の木々を激しく揺さぶる。 サラカエルとシリウスは、一瞬目を見合わせて、ニゼルに急いで戻ろうと提案した。 杖を腰に戻しながら、羊飼いも強く頷き返す。長居は無用、更に、肉の傷みも気になるところだった。 来た時と同じように、天使と一角獣が転送陣の用意を進める。ニゼルは、横たわる銀狼の亡骸にそっと手で触れた。 艶めく毛並みは、まだ微かな温もりをその身に残したままでいる。 「うへ!? シルバーウルフの肉! スッゴい獲物だよね、どーしたのコレ!?」 「か、狩ってきた。その、ニゼル=アルジルらにも手伝って貰ったがな」 その日の昼食。早速、殺戮の天使が血抜きといった下処理を施した肉が、鷲獅子の前に出された。 驚き、次に「ニジーを危ない目に合わせたの」と憤慨した琥珀だが、しかし満更でもなさそうに見える。 むしろ、ものすごーく喜んでいるような……微笑ましすぎる光景に、周囲は穏やかな空気で満ちていた。 「あー。幸せだなー」 ニゼルは、サラカエルが淹れた紅茶で喉を湿らせてから、ほっと安堵の息を吐く。 あの素直じゃない魔獣にしては、まっすぐな反応に見えた。よほど番からのお返しがお気に召したのだろう。 サプライズだいせいこーう、ぽそりと呟いて伸びをしたところで、背後に何者かの気配が寄る。 「聞いたよ、ニゼル。なかなかに大変だったようだね」 換えの茶をポットごと運んできた親友だった。 「藍夜! ううん、殆んどサラカエルがやってくれたから。俺は何もしてないよ?」 「嘘を吐くものではないよ、ふたりの仲裁は骨が折れただろう。それに、僕にこんなものまで用意して」 藍夜のシャツの胸ポケットに差し込まれた愛用の羽根ペンには、銀狼の毛で編んだ白銀の護符が結ばれている。 先刻、ニゼルがホワイトデーのお返しに作成したものだった。お返しにしては豪勢なものだね、と親友は苦笑する。 聞けば、シルバーウルフの希少性については、以前鳥羽夫妻から聞かされていたのだと彼は話した。 どうりで驚かれたわけだ、一人ふむ、と頷いて、ニゼルは照れ隠しも含めて破顔する。 「前に藍夜がバレンタインにくれた焼き菓子……えっと、フィナンシェだっけ。凄く美味しかったから」 「あれを作ったのは僕ではなく、街の菓子職人だよ。いや、これは本当に見事な品だね」 「へへ、そう? 喜んで貰えたなら嬉しいよ。琥珀も凄く嬉しそうだし……上手くいって、本当に良かったなあ」 「そうだね……来年もまた何か贈るとしよう、ニゼル」 「えー? 俺またお返し悩まなくちゃいけないじゃない! うん。楽しみにしてるね、藍夜」 目の前で、魔獣と神獣のふたりが、仔らを挟むようにして堂々といちゃついていた。 羞恥に慌てふためく一角獣の口に、鷲獅子が嬉々として、手掴みした牧草を押し込めようとしている。 白羽根の鷲馬が呆れたように寝たふりを始め、黒羽根の鷲馬は彼女の首元に嘴をすり寄せていた。 ……もう一度、親友が銀の護符を指で弾き、ゆらりと揺らす。意識を呼び戻されたニゼルは、彼の顔に目を向けた。 「ところでニゼル、あまりこんな事は言いたくないのだがね」 「? 何、改まっちゃって。どうしたの?」 「いやね、君、手伝いをかって出てくれたサラカエルには何を渡すつもりでいるんだい」 「……」 「……ニゼル?」 「……あ!? うわっ、そういえばそうだった、忘れてた! わ、忘れてただけだけどね、どうしよう!?」 慌てふためく事態に陥ったのは、自身の騎獣だけではない。ニゼルは椅子に腰掛けたまま激しく狼狽え始める。 藍夜は、何か物言いたげな顔で黙り込んでいた。彼の視線の先には、既に問題の人物が立って微笑んでいたからだ。 「へえ、ウリエルと騎獣以外はどうでもいいと。なかなかに礼の欠けた素晴らしい人間性だね、この間抜けは」 「うわっ、サラカエル!? ごごごごめん、ごめんって! って、藍夜! 何笑ってるの、他人事だと思ってー!」 「はは……いや、災難なものだね、ニゼル。頑張りたまえ」 昨年の冬は、時間の経過が異様に重く感じられたように思う。それは、この場にいる誰もが思う事だった。 誰も決して口にしないが、容易な道のりでなかった事は確かだ。ここに至るまで、思う事は多々あったように思う。 アンブロシアが運んでくる料理を前に、話が弾む。ニゼルはその後、横で殺戮に延々と嫌みを言われ続けた。 それでも、笑みを交わしながらも、罵られながらも、目に見えぬ何者かに祈らずにはいられない。 「あー、えっと! ほらっ、料理冷めちゃうよ!? ね、早く食べようよ、藍夜もサラカエルも!」 今日は、互いに感謝と想いを伝える為の、ささやかな特別な一日でもあるのだ。 たとえそれが身勝手で不思議な行動に見られたとしても、日々を尊ぶ事を悪しき事だとは思えない。 特別な食材と食卓が、各々に祝福と贖罪を尽くしてくれたらいい……春の日差しに鷲羽根を透かして、小さく笑う。 豪勢な午餐を前に、ニゼル達は改めて「いただきます」と口にした。和やかに、食事会は過ぎていく。 |
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