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ほろ苦スイートな日々(楽園のおはなし4章SS)


 
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(break time)


「これさ、神様たちくらいしか飲めないものなんじゃないの?」
「あー……そうだったかな。貰ったんだ」
「嘘でしょ? どうせ、どの神様も手を付けないようなやっすいの貰ってきたんでしょ」
「分かっているのならいちいち突っ込まなくてもいいだろ」

それは、人間たちが神々に奉納する物の中にたまに紛れている趣向品。
無口で真面目で通っているザフキエルだからこそ、見劣りするものとはいえ、神々からのおこぼれに与れるのかもしれない。

「俺はブラックで飲むのが好きだ」
「えぇー。僕はミルクと蜂蜜を入れた甘いやつの方が好きだなあ」
「そういうのは、ヒトの世界ではお子様舌って言うらしいぞ? ザドキエルは子供だな」
「はいはいザフキエルは大人ですねー? 僕はお子様で結構ですぅー」

淹れたてのコーヒーを囲んで、それぞれの舌の好みで盛り上がる。
普段、忙しなく神に付き従う中の、天使達の休息のひと時だ。

それは、どれだけの年月が過ぎようとも変わらないのかもしれない。






「アベル! コーヒーを飲むぞ!!」
「あ、お兄ちゃん、また勝手に持ってきたの!?」
「レヴィ殿の遠征の戦利品だそうだ。 誰も選ばなかったらな!」
「まあ、このお屋敷の人たちは、紅茶とかハーブティーの方が好きだけど……」
「だから、ちょっとくらい大丈夫だ!!」

持ってきたコーヒーを囲む。
アベルは、手渡されたコーヒーにミルクと蜂蜜を入れた。
それを横目で見つつ、カインは何も入れていないそれを口に運ぶ。

「お兄ちゃん、ミルクと蜂蜜入れないの?」

普段アンブロシアに入れて貰うのは甘めのコーヒーだ。
アベルはそれをよく知っているし、かく言う自分も甘めが好きだ。

「平気だぞ! オレはブラック派だからな!!」

そう自分に言い聞かせるように宣言したカインは、口に含んだ少し多めの一口を、ごくりと喉を鳴らして飲み下した。
直後、誰もいない方に顔を背け、文字通りの苦虫を噛み潰した表情をする。
それもコーヒーを飲むにあたってのカインの一連の動作だ。

「僕は甘い方が好きぃー」
「……そ、そういうのを! お子様っていうんだぞ!!」
「僕たち子供だよ?」

おかしいな、前は飲めたのに、と、ぶつくさ言いながら、カインは渋々ミルクと蜂蜜を追加する。

そんな午後のひと時。




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 UP:15/12/18.