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南天屋の見積書vol.XX

 呈上品 : 【おしごと】仕事に行ったら話が噛み合わなかった話【がんばる。】 元締め編
 (このお話に登場する「オリゼ」さんについては『こちら』

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その日、遺跡平原には怪鳥の姿が確認されていた。

大型都市ドンドルマよりさほど離れていない位置に広がる拓けた狩り場、遺跡平原。
黄金に染まる野草の原や、狩り場の北側を囲む鉱物資源を多く含む山脈、周辺を流れる河川、崖下に広がる森など、目に鮮やかな色彩溢れる狩り場である。
ドンドルマをはじめ、高原の拠点ベルナ村、更には東の熱帯雨林地方と、物資の運搬だけでなく人の往来にも活用されてきた土地でもあった。

「よぉ、待たせたかよ。クソガキ」
「だァれが、クソガキだってのかねェ! 人を待たせた輩の態度じゃねェわな、こりゃ」

その日、遺跡平原には怪鳥の姿が確認されていた。討伐しなければならないほどひっ迫した状況でも無し、と今のところは静観するよう通達が出されている。
故に南天屋の元締めこと操虫棍使いのハルチカは、次の仕事の依頼人との待ち合わせ兼顔合わせ場所をここに指定されていた。
仕事の都合上ドンドルマではなく経路である遺跡平原の方が都合がいい、と相手方に強引に押し切られた形である。集合時間を提示したのも相手が先だった。
したがって彼は付き添いの猟虫――兼仕事の相棒ヴァル子さんともども微妙に機嫌を傾けていた。いかんせん指定時刻からすでに一時間以上は経過している。

「おいよー、悪かったっつってんだろ? コッチも先方の我が儘に振り回されてこのザマだ、お前も管理職ならそれくらい分かんだろ」
「生憎だがネ、儂とお前サンの都合なんざ無関係どころか掠りもしてないンだよ! ゴメンナサイの一言も言えないようじゃ、救いようがねェってモンさ」

集合場所はベースキャンプを出てすぐの地点。普段はアプトノスらがのんびりと草を食みまくっている第一番エリアだ。
目印代わりのハチの巣の下で、これまでハルチカは手持ちの虫餌をヴァル子さんに与えたり、それこそハチミツを回収したりして時間を潰していた。
だというのにいざ顔を合わせた依頼人の態度はこうだ。反省の色どころか謝罪の意思さえ見えてこない。明快な商人がピキッとくるのも無理からぬ話である。

「へーへー、ッたく、懐の小っせぇヤツだぜ。イイけどよ、お前よか心の狭いヤツなんざ世の中には山ほどいるわ」
「なンべん同じことを言わせんのかねェ、お前サンの都合なんざ知ったこっちゃねェのさ。その羽根、毟り取られたくなかったら先に話をしやがれッてんだ」
「アァ? とんだクソガキじゃねーの……こんなのに依頼を出そうってんじゃ、あのクソ野郎の見る目もどうかしてるぜ!」

クソ野郎はソッチだろ、喉奥から出かけた罵倒を、ハルチカは辛うじて飲み込んだ。
相手は、最近になってハンターズギルドに雇用されたばかりの身だと聞かされている。本職のギルドナイトというよりは、その下で働く下っ端扱いなのだと。
その証拠か、あるいは本人のお洒落思考か。男が纏うのはギルドナイトが着用する衣装――しかし、色こそ似ているもののデザインには多少の違いがあった。
最も特徴的なのは、頭装備(フェザー)に添付されている飾り羽根だ。
ハルチカらが知るギルドナイト専用装備は、向かって左、本人からすれば右側に羽根飾りがついている。一方で、男の羽根飾りは逆側……左に挿されていた。

「ギルドバード、ねェ。そりゃ顎でこき使われてあっちこっち飛び回らにゃならん輩には、ちょーどいい装備だろうヨ!」
「おいよー、聞こえてんぞ。ハルチカちゃんよ」
「誰がチャンだって? まさか居眠りしながら来たとでも言うンかい? お前サン、目ン玉どっかに置き忘れちまってンじゃないだろうね!」
「おーおー、お小言ばっかりかよ。ッたくよー、この歳でケツの穴の小っせぇガキのお守りなんざ、御免だぜ」

「ギルドナイトのようでギルドナイトではない」。その事実は、デザインが異なる装備だけでなく佇まいや言動にもはっきりと現れている。
蒼火竜を思い起こさせる縹の髪に金ぴかのピアス。好戦的な眼差しに差すのはピアスと同じ金の瞳で、空から追いやられた飛竜さながらに見えなくもない。
しかし、この男はあくまで生身の人間なのだ。依頼人としてこの態度はいただけない――ハルチカは話の通じなさにウンザリして嘆息した。
知人「オズ」の話によれば、この男は彼の同僚の部下にあたる使いっ走りであるらしい。その同僚サンとやらもロクでもねェんだろうよ、と青年は閉口する。

「ガキのお守りって言うがね、待たされたこっちとしちゃお守りをさせられてンのは儂の方! そうとしか思えないんだがネ!!」
「話、ぶり返すのスキだよなァ。それよか早くしねーと日が暮れちまうぜ。イャンクックがどう出るか、ギルドのジジイどもが気にしてんだろー」
「ハッ。儂らに持ちかけられる依頼じゃねェんだ、任された奴に頼んどくサ……で、お前サンの依頼ってのはなンなんだい」

男はそこでようやく軽薄な気配を潜めてみせた。切れ長の眼が細められ、俄に剣呑な光を帯びる。
ふと、どこかでこの顔を見たことがあるような気になった。思わず眉間に力を込めたハルチカに、男は近場の岩に腰を下ろすよう手招きする。

「……よぉ、ハルチカ殿。お前ら南天屋のガキどもは、『古龍』を相手にしたことってあんのかよ」



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放たれた言葉は予想していたより遥かに重く、鈍い。
いよいよ眉根を寄せた若き商人に、通称、縹の狩人は犬歯を剥き出しにして凶悪に笑いかけた。

「数ヶ月前の話だ。古代林ってーのは知ってるよな? ベルナ村よかよっぽど遠くにあって、夜鳥やら斬竜やらが好き勝手ヤりやがってた狩り場だよ」
「ウン……なんだ、やーな予感がしやがるねェ。儂、帰ってもイイかい?」
「おいおいハルチカ殿、何言ってんだよ、話はまだこれからだろー!? 大した話じゃねーんだ、そう気張んなや」
「黙れッてんだよ、この胡散くせェチンピラモドキが! あンのクソジジイの頼みでなけりゃ、手前(テメェ)の話なんざ胸糞悪くてたまんねェ!!」

艶やかな泡孤竜装備の錦ヒレ部分を狙った手が飛んでくる。じゃれ合いの意味合いを感じる振り方だったが、ハルチカはそれを払いのけていた。
謝罪の意思が見られない、これはまだいい、当人の気質や相性の面もある。対話をするうちに交渉が通った相手というのも、これまでに何度か覚えがあった。
しかし、この男の他人を莫迦にするような言動は……わざと挑発するようなニヤニヤした笑いもまた、鼻につく。
出来れば関わりたくない相手だ。とはいえ、古龍などというワードを出されたからには容易に逃げ切れる話でもないことを、この元締めは理解していた。

「『あの件』じゃお前らも捕獲用麻酔玉の仕込みとやらを手伝ったらしいじゃねーの。オレはンなもん興味もねーが、カシワ殿はハッスルしたって話だしな」
「カシワ……聞いたことあらァな。お前サンとあのオニーサン、知り合いだったンかい」
「さァてな……本題だ。例の骨塗れのクソ龍の帰還が確認されたんだとよ。調査は別機関がヤってるらしいが、討伐依頼が出た暁には協力してほしいんだと」

嫌な予感というものほど、当たるものだ。
男が持ち出した依頼とは近い将来訪れるであろう脅威に対抗する相談であり、しかし今はまだ小康状態であるため為す術なし、というものだった。
近い将来、小康状態……そもそも古龍という生き物は、人間の想像を遥かに超える行動をとることで知られている。
前もって対策、準備などを進めることはできたとしても、実際に彼らに有効な手段は限られてくる。いかなる対処も、あくまで時間稼ぎにしかならないのだ。
要するに、「それ」がいつ起こるかは現時点では何ひとつ分かっていないということだ。前触れなく多忙になる日々を想像して、ハルチカは短く嘆息した。

「アァ……平穏な毎日ッてのが恋しいねェ。儂ァ、ゼニーの勘定するのが生きがいだってェのに」
「アッハ、お仲間抱えてりゃァ手抜きも出来ねーわなー。金勘定は好きなんだろ、だったら本望ってやつなんじゃねーの」

思わずぽろっと愚痴をこぼした矢先、同意とも同情ともとれる皮肉るような物言いが返される。
何を知ったような口を、岩場に片膝をつきながら眼下を睨む青年だったが、男はうっすらと目を細め、凶悪に口角をつり上げるばかりだった。

「だいたいよ、金の扱いに自信があるからって酒場で博打に注ぎ込むようなクソガキなんざロクでもねーよ。最後にはパアッと散らせるくせによ」
「!? お前サン……やっぱり儂とどっかで会ったことがあるッてンだな。どこのモンなんだい」
「さァてなァ。毎夜変わる賭博相手のことなんざ覚えちゃいねーよ。有名人だろ? お前も、昔お前と顔馴染みだったっつー、今は亡きクソ獣人のことも」

「亡き獣人」。それはかつての顔馴染みであり、賭博場における戦友であり、七竈堂の常連客であり、馴染みの商店の身内にあたる笑顔を絶やさぬ女だった。

(『オリゼ』か……あいつ、こんな奴からもふんだくってたッてのかい。用心棒や護身術だってなンも持ってなかったろうに、要らん土産だよ。ッたく)

酒と博打に明け暮れる狂人じみた相手だったが、ハルチカ自身は彼女に悪い感情を持ってはいなかった。夜通し酒を飲み交わした記憶もある。
最期を看取ったわけでもなかったが、彼女が気に掛けていた夫と、彼の弟子にあたる醸造屋と南天屋は今でも縁が通じていた。
わざわざ死獣人に鞭打つ必要もなかろうに……思いがけず、頭にカッと血が上る。反射的に岩から飛び降りようとした瞬間、飛んできた裏拳に歯噛みした。
操虫棍の柄が鈍い音を立て、辛うじてその場に踏みとどまる。手にじんとした痺れ、そして互いの反射速度に苦いものを感じ、強く睨み合った。

「……なーる。そうかい、読めてきたゼ。お前サン、前に儂らと博打やってボロ負けしたことがあンだろう」
「おーおー、やっと思い出したか。お前ってよりかはあのクソ猫の方だがな……このオレとお仲間を、よくもあんだけコケにしてくれたモンだぜ」
「そりゃァご愁傷様だ。あいつは儂の謙虚さを、ちぃとばかし見習った方がよかったかもしれないネ」
「抜かせや、クソガキが。あのクソ猫、稼ぎ方を知らねェガキどもからもぶんどりやがって……おかげで一時赤字になったんだよ、回収すンのに苦労したわ」
「おぅ、知らないのかい。博打ってのは自己責任なんだゼ。負けた腹いせに八つ当たりするなんざ、お前サンが天に見放されたって証拠なンじゃねェのかい」
「おーおー、クッソ気に入らねーわー、内海にでも沈めてヤるかァ? ……あのフラヒヤ育ちのクソガキがうるせーからヤらねーけどよ」

……フラヒヤ育ちのクソガキとは。南天屋が雇う双子のいずれかのことだろうか――瞬時にそれは無いな、とハルチカは自ら巡らせた深読みを否定する。
睨み下ろした先で、男は金瞳に燃えるような憎悪をたぎらせていた。知ったこっちゃねェよンな私怨、舌打ち混じりに視線を逸らす。

「まァイイわ。昔のことだ、オレもちったァ大人にならねーとなー。くたばったクソ猫とクソガキが相手じゃなァ」
「おや、大人になれてるようにゃ見えないがネ? 儂に絡んでくるあたり」
「おいよー、ギルドの狗(ジャギィ)がイイコでなきゃいけねーなんて決まり、どこにもねーだろ! オレはオレの言うことしか聞きたかねーんだよ」

その意見はなんとなく理解できる点がある、青年は口には出さずともごく小さく首肯した。

「いつオテツダイ要請が出るかは分からねー。だが心の用意はしとけってことだろうよ。しかと胸に刻んどけよ、クソガキ」
「言ってくれるネ。儂ァ金勘定しかやらねェの、再通達の手間くらい惜しまんでほしいモンだけどネ」
「言ってろやクソガキが。いつかそのクッソ生意気なツラ、ボコボコにしてやるからな」
「モラハラ、パワハラってンだぜ、そういうの。ハァ~、オッサンの嫉妬なんざ怖くてつきあってらンねェぜ!」

ヘラヘラと受け流すハルチカに腹を立てつつも、それをどうにか押し殺そうとして男は笑う。こめかみには青筋が浮いたままだった。
話ってのはソレだけかい、短く問いかけるハルチカに、言われた通りのセリフを伝える仕事ってーんならそうだろうな、男は肩を竦めて歩き出す。
……この縹の髪持ちのハンターの名は、アトリといった。
かつてある密猟団の幹部をつとめていたが、今は銀朱の髪持ちの騎士に成敗され改心こそしなかったものの、手腕を買われて扱き使われている最中だという。



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「ッア~! やっと帰ってこれたゼイ。こんなことなら、やっぱりドンドルマのどこかで落ち合った方が楽だったんじゃないのかねェ」
「……ン。ハル、いま帰(けえ)ったべか」
「おぅ、アキ! それがネ、商談だと思ったら面倒な愚痴を垂らされただけだったンよ。こんな話が許されるモンかい?」
「おれァ、火ィ見てんだ……鍋サ、焦がすわけにいがねェべよ」

縹の狩人と別れた後、ハルチカは帰途の最中に流れのハンターか旅人相手に行商でもできないかと考えたが、その日遺跡平原を通過する隊商はゼロだった。
イャンクックを警戒しているのか、近場の人里から採集に訪れた人間すら見つからず、彼はただただ無駄手間をとらされた疲労とともに帰還する。
出迎えたアキツネは、顔を見せただけですぐに厨房に引っ込んでしまった。
こういうとき、彼がなにかしら美味いモノを作ってくれていることを知っているハルチカは、これといったウザ絡みもせずに南天屋応接間に足を向ける。

「ヨッ、集まってンね」
「ハルチカ! お帰りー。なんか疲れてない? 大丈夫?」
「ム、戻ったか。俺も先刻戻ったばかりなのだ。それで、相手の話とはなんだったのだ? オズ殿の言付けでもあったのだろう?」

出迎えたのは、片や黒髪に水面の瞳の接客担当。温かい湯気を立てるお茶片手に、報告書各種と睨み合っている。
片や、同じく黒髪に翠の隻眼持ちの薬師。こちらは己が弟と分けっこしようとしたのか、蒸かしたての肉まんを利き手に掴んでくつろいでいた。

「それがネ、……イヤァ、この手の話は腹ごしらえした後でもねェとやってられんよ。伝達役がこれまたクソだったからサ」
「なんと。ということは初対面のギルドナイトか? 人選を誤ったのか? オズ殿にしては珍しいこともあるものだ」
「オズさんも忙しそうにしてるもんね。けど、こうして僕らにも仕事を回してくれてる……厄介な依頼も多いけど、稼げるから有難い、かも?」
「なんだイなんだイ、あのジジイの一人勝ちってか!? ア~、儂のことを労ってくれる優しい人間、いないモンかねぇ!」

冷静な反応の双子にピクリと片眉を上げたハルチカは、バターンと日頃のだらけ格好の再現よろしく、対面ソファに勢いよく倒れ込む。
僅かにホコリが舞い上がり、シヅキは湯呑みにそれが入らないよう慌てて茶に口をつけ、メヅキは元締めの悲嘆を労う代わりにカラリと笑った。
せっかくの装備が台無しである……と言いたいところだが、先刻までわざわざ狩り場まで足を伸ばし、面倒な案件を耳に叩き込んできたのはこの青年なのだ。
黒髪兄弟は、ハルチカ肉まん食べる、疲労回復効果の茶でも淹れるか、などそれぞれが思う形でハルチカを慰め始めていた。

「……ン。だったら、余計にメシにすんべ。で、シヅキ……この食えねェタマゴ、邪魔だがらどっかサやっといでくれンべか」

まったりとした雰囲気が流れ始めたとき、南天屋自慢の料理人が、大皿を両手に一枚ずつ乗せながら厨房からご登場した。待望の瞬間である。
拍手喝采で迎えようとした一行だったが、不意にアキツネの足が閃いた。ゴツンと鈍い音がして、直後テーブルの下を何やらぴかぴかした塊が転がっていく。

「デカいな? 銀、いや、『鋼のたまご』ではないか」
「うわーっ、アキツネ!? これ、貰いものっ! 仕事の報酬……報酬……そう! 報酬でもらったんだよ!!」
「メシ食うなサ集中出来ンべ。転がしといでもいッがら、テーブル周りサ置ぐのは無しだ」
「だーッははは! 高額売却品を用無し扱いッてか! 流石だねぇ、アキ」

このアキツネという青年は、食事を疎かにする人間と事柄を……以下略。
さておき、報酬代わりのタマゴは部屋の隅に適当に転がしつつ、南天屋一同は一つのテーブルを四人全員で取り囲んだ。
アキツネ渾身の料理は彼が得意とする中華――バルバレ風であることが多い。味は濃く、深みがあり、脂も照り照りというパーフェクトな出来栄えなのだ。

「わァ~!! 今日も美味しそうだなぁ!」
「よしよし、ここは一つ酒でも開けねばな」
「イヤァ、今日も頑張ったねェ! このときのために奮闘したって言っても過言じゃねェのサ!」
「ン。喋ンのは……後でも出来ンべ。それよりお前ら」

そうだね、やるか、やっちゃうかネ、やっとくべ――そも、彼らは美味い酒と肴をこなよく愛する、ハンターらしさに溢れる活力ある若者揃いである。
それぞれが顔を見合わせ、キラキラに輝く料理の上、きんとよく冷やされたフラヒヤビールをジョッキに注ぎ……以下割愛。

 ――乾杯ッ!!

ガコン、という聞き慣れた音がいつもの合図だ。まずはビールをぐわっと一飲み。呼気に酒気を混ぜて吐き出せば、それだけで心は軽やかに躍った。
口端に、あるいは鼻下に泡をつけながら、各々アキツネ手製のご馳走に箸を伸ばす。ふと誰かと視線が合ったとき、向こう側に見えるのは満面の輝く笑みだ。

「ンン~!! この炒めもの、最高っ! お肉柔らっかぁ!」
「だっぺ? ンめぇべな? で、こごサこのタレ後掛けしちまッたら……飛んじまうべよ」
「ぐわぁ~!! なんと罪作りな所行なのだ! ただでさえ進む白飯が余計に……アキツネ、ココットライス、お代わりだ!!」
「ンじゃ、儂はその隙にコッチの鶏料理をいただいとこうかネ! 皮パリパリのところをこう、白髪ネギを添えてェ……」
「あっあっあっ、お代官様! 元締め様ハルチカ様!! 僕にも慈悲をッ、それくださいー!」

……雪原で風に吹かれても。見知らぬ誰かと潮風を浴びようとも。霞がかった視界に惑わされても。あるいは、暗に暗がりが手を伸ばしてこようとも。
彼らにとって、ここでの日常こそが日々の糧だ。美味い酒と肴を手に、彼らは今宵もそれぞれが持ち寄った話を語り合う。
苦難溢れる依頼をこなした、徒労を重ねるだけの大損をした、あの店の状況がよくない、知り合いの調子がいい……一つ一つは取るに足りない話ばかりだ。
しかし、顔を合わせて語らうことで見えてくるものもきっとある。
いつの日か……苦痛に手招かれようとも。郷に後ろ髪を引かれても。痛みに対峙する道であろうとも。己が血が己の意思に反しても。
彼らは今日も今日とて、なんら変わらずここに在る。逆さま南天と黒星とを掲げ、日々を消費しながらそこに坐す。

ドンドルマの一角、銀朱と裏葉の見守るどこか、寂れた愛しき彼らの塁壁(シャトー)。
今日もまた、その事務所の中に笑いは絶えない。



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その日、遺跡平原には怪鳥の姿が確認されていた。
ハンターズギルドも古龍観測隊も、このことはしかと把握していた。しかし、遺跡平原にイャンクックが訪れること自体はさほど珍しいことでもない。
彼らは森丘暮らしのランポスらと違い翼とそれに見合う飛翔能力を有しており、好物の盾虫を探す手間を惜しまない質だったためだ。

「クォカカカ……ンゴゴゴ」

特徴的な声を漏らし鳴き、愛嬌ある風貌を巡らせて、その日もイャンクックはクンチュウを求めて平原を元気よく走り回る。そこに人間たちの姿はなかった。
黄金の草原に青空、その中に、赤色の甲殻をもつ鳥竜が一頭。目に鮮やかな、自然そのものを謳歌できる雄大な光景だった。

……生命あるものへ。黄金の風に吹かれ、崇めし頂に至るまで、狩人を乗せて。
世界は、目まぐるしく流れる最中にもただ美しいままそこに在る。
その断片を、足掻く様を、誰が嗤えるというのだろう――彼らの旅路は、これからも続いていく。



 …… Afterword ……



毎年恒例withいつもお世話になっている&推しMH二次創作【黄金芋酒で乾杯を】筆者、zok氏の誕生日お祝いに書いたもの。
自作品【カシワの書】とのコラボ……クロスオーバー群になります。芋酒登場人物の方々を無許可でカシワの書メンバーとワチャワチャして頂きました。
なおzokさんの本当の生誕日は10/30なんですが今年は当方のシゴートーーの都合で少し早ry ( ‘д‘⊂彡☆))`ν゚)・;'
多くは語りません。これから一年、そしてこれから先もzokさんに冒険心くすぐる追い風が吹きますよう。
改めて、生誕日おめでとうございます。限りないご武運を!


(わに拝)






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 UP:24/10/28 → Re UP:24/12/02