・取扱説明書 ▼「読み物」 イラスト展示場 小話と生態 トップ頁 サイト入口・ ![]() |
記憶の残照(ものをかくということ) TOP |
生命を削りとるように 血潮を注ぎこむように 鉱石を磨きぬくように そんな風に、ひとつひとつの断片を指先でなぞっていく この指は非力で、たとえその範囲を二の腕にまで及ばせたとしても 抱えられるもの 支えられるもの 拾いあげるもの そういった万物さえ、ごく少数しか手にすることができない 指の隙間から、星の屑が、星の砂が、星の雨が流れ落ちるように 私は、この亡骸から剥がされる数少ない輝きを ただぼうと眺めているだけなのだ (悲しみを描くにはあまりにも瑠璃が足りず) (喜びを広げるにはあまりにも羽根が少ない) 私という死骸のてっぺん、いちばん高き場所に残すもの 煌めく思い出 色褪せた願い 遠い日の記憶 在りし日の夢 切望と絶望を織りながら、後悔という航海を辿りながら 数多の残されたそれを詰め込み、私は暗礁へと舵を切る 私はどのような顔で、その古びた背中に乗り込んだのか 振り返る術など、群青の空の、もっとも暗い底の果てだ 思い出を削り、願いを乗せ、記憶に蓋をし、幻影に夢を馳せ 私は、この頼りない指先を二の腕ごと振るわせる ひとつひとつの断片は、言葉にすることもできないほどおぼろげで 世界の果てに連れていくには、途方に暮れてしまえるほど弱々しい (ごくわずかな、ささやかな灯) 骨肉を溶かし蝋にして、血痕を集め油に変え、宝石をあしらった灯台に立てかける 見よ、頼りない灯が、私の血肉を抉って描いたそれが、煌々と足の下で燃えている 私の指が綴るのは、私の身を削ってできた星々の煌めき 私の指が描くのは、私の心を磨いて創った鉱石の首飾り 私という亡骸を焦がす赤色が、燃え盛る灼熱のうちに、淀んだあらゆるを呑みこみ 青色に冷えて彼方に沈む、あのささやかな星の耳元に、工房の在処を知らせている (世界の果てが私を呼ぶ) 宝石を磨くように 羽根を労るように そのようにして、私の指先が神秘の軌跡を辿る そのようにして、魔法じみた幻影をいまも待つ そこまでたいしたものも表現できてはいませんが。 ストレス発散だったり、考えたり触ったりしないとどこか落ち着かないものだったり、 なんとなしの気休め、日々の生活を送る上で感じる物足りなさの裏返しだったり。 そういう風に、自分がやりたいようにつきあっていきたいのです。 絵が描けるから偉い、文章が書けるから立派。 そういうことじゃないんじゃないかなと、最近ぼんやりと思うんです。 |
TOP UP:17/10/20 |