取扱説明書  ▼「読み物」  イラスト展示場  小話と生態  トップ頁  サイト入口 



愛の日(燃やされた魂よ)


 TOP




あの日
君は灼熱の痛みと戦っていた
うなされるような激痛が体の自由を奪い
次第に冷えていく魂の音色は
耳元から遠のくばかり

駆け回っていた足取りも
無邪気に笑う顔も
少しずつ
少しずつ
変わりゆく町並みのように
掻き消えた遠雷のように
手元から離れ
次第に忘れられていくだろうか

歳月とともに薄れて微睡み
やがて記憶の全てから
私の無責任な脳の中から
あの温もりともども消えてしまうだろうか
君はあんなにも懸命に命を燃やしたのに
それすら忘れてしまえるというのだろうか
ああ、
なんと愚かで悲しい生態だろう

君よ
どうか今は
苦しみも悲しみもなく
餓えもなく寂しさもない
楽土の中で笑っておくれ
息を吸い
菓子を食べ
花の香にむせることなく
さいわいの中で笑っておくれ

君と同じところにいけるとは思わない
けれどどうか君よ
家族の輪の中にいた君よ
どうか今は
しあわせの中で笑っておくれ





 TOP
 UP:22/01/17 → ReUP:22/03/21