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この電脳世界の果てで(目に見えぬ糸)


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(今日もまた灰色の空)


ゼロとイチの狭間
並ぶ文字列
連なる言葉

罵倒
罵声
嘲笑
哄笑
煽りアオラレ
悪意と殺意
八つ当たり
鬱憤
鬱屈

拾い上げる目
読み上げる声

慈愛
自愛
同情
強情
諭しサトサレ
善意と偽善
同一視
ないものねだり
隣の芝生はなんとやら

拾い上げる目
読み上げる声

「そこにあるものは友愛かしら?」
「そこにあったのは信愛かしら?」
「そこに残っていたのは確かに愛だったのかしら?」

……目で見て
……耳で聞き
……香を嗅ぎ
……舌で舐め
……手で触れ
……声を出し

「たとえそれができなくとも、アナタはそれを愛と呼ぶのでしょうね……」


リアルとヴァーチャルの狭間
打ち出す文字列
吐き捨てる言葉

たとえそれが現実からの逃避としても
たとえそれが仮初めの理想であっても
たとえそれがその場しのぎの虚言でも
たとえそれがその場限りの言い訳でも
たとえそれが果たせぬ夢想の残滓でも
たとえそれが果たすべき承認欲求でも
たとえそれが領域の侵略であろうとも
たとえそれがアナタらしさの表現でも
たとえそれがアナタの醜さの現れでも

拾い上げる好奇の目
読み上げる憎悪の声

打ち寄せては遠のくさざなみのよう
指先をすり抜ける透明な砂粒のよう
だいだい色へ飛び立つ黒い鳥のよう
ぐんじょうに降り立つ白い鳥のよう
グラスに注ぐ赤黒いぶどう酒のよう
カップに満たす象牙のミルクのよう
灼熱の窯に放る水に濡れた鋼のよう
布を覆いかぶせる夜の女神様のよう
白銀を振りまく翼をもつ馬車のよう

拾い上げる情けの目
読み上げる救いの声

「ワタシはここにいるわ」
「アナタがまだ大好きで」
「アナタにおぞましいほど負の心を向けている」

四角い箱……
薄い板切れ……
細長い管……
数字と英語の羅列……
ちかちか光を瞬かせる小箱……
光か炎か水流か風か原子が生み出す糧……

「……画面越しであろうとも触れるものはあったかもしれないの」


今宵
電脳の世界に何を刻み
アナタはその砂浜にどんな軌跡を残すのか

乳白色の朝がやってくる
現実が息吹く
ワタシは桜貝をポケットに入れて扉を開ける

ゼロとイチの狭間
複数の足跡は
一度たりとも交わらないまま




インターネット上での友情や信頼関係は成立するのかどうか、がテーマ。
思考のオトモはチリヌルヲワカ・みずいろの恋。Lis氏お気に入りのナンバー。

スカイプどうのライブチャットどうの動画配信どうのといった、
文字を超越した交流についてはここには含んでいません(やらないともいう)

難しい話だと思います。
生きる以上、欲求は際限ないものだし、自分でもコントロールするのが困難なのに
相手の「顔」が見えないインターネット上でのつながりなら、なおさらのこと。
親しくなったからとつい甘えすぎたり、全力で寄っかかってしまったり
更にはそれを飛び越えて、同等の仲間であった人を見下したり馬鹿にしたり。
私もやらかした経験があるので、自戒も込めて('A`;)

言葉が空回りすることもあるし、努力してもこちらの意図が伝わらなかったり……
嬉しくなったり悲しくなったり、なんて自分に振り回されたこともありました。
都度、私の立ち回りは本当に十分だったかなあ、なんて回想してみたり。

言葉も文章も、難しい。
一生かかっても、使いこなせるようになる未来なんて来ないかもしれない。
それでも付き合っていきたいです。電脳世界に足跡を残す限りは。






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 UP:18/07/11