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天空の蛍火(輝きの向こう岸) TOP |
(今を切りぬく鏡) 遙か彼方、この足が地に着くより昔 気の遠くなるほど高き場所から、その頭上めがけて極彩色の光が降る 五色、七色、無色透明、多色性 目に見える、あるいは目に見えない数多の輝きが群を成し 乳白色にたゆたう、あの細やかな無数の鉱石の集合体から剥離して 一粒一粒がはかない光として、あなたの上に降ったのだ 指先が触れる、可視の氷粒 すくい上げた輝き、甜果の甘味 また別の日は、耳をかすめる虫の羽音 不可視の向こう、夜の闇 草木か花か猫の息か、ひっそりとたゆたう香り 鉄骨で築いた空の塔が示す先、濃紺に染まった水面にひとつの舟が発つ 手ですくい上げるでもなく、また硝子瓶に閉じこめるでもなく あなたはそれをそっと、自らの手につかの間乗せたのだ 獏の爪先よりも柔らかな孤が、石南花の花のように開いて波に乗り やがては漆黒を煌々と照らす白銀の帆船へと変貌するのを あなたは不可視の鏡面越しにつかの間覗き、ひとつの景色として拾ってみせた (あの白く輝く光、金剛石のよう) (あの黒い玉石の向こう、石炭を詰めた袋のよう) 銅色にまどろむ岩山を踏み越え 凍てつく森に名狩人の姿を見つけ 南方、反転した地図に二つの雲が顔を出す 高原、悠久を捕らえた鏡が極彩色のかけらを落とし込み まぼろしの線路に、今も白鳥らの足取りが残る 甘やかなとびきりの春の匂い、桜色 東に位置する、誉れ高き霊峰 白銀の世の果て、切りぬいた奇跡の軌跡 (わたしを形づくるものが何であれ) (世界がみせるものが何であれ) 可視の光が降る 不可視の光が降る 遙か彼方、遠い昔、今より離れた、過去のとき 極彩色の光が五感と七つの欲を解き放ち 目に見えぬ無限の可能性を、多種多様に世界に蒔いた 芽吹き、芽吹かせ、形づくり わたくしたちはこの地に足を着けたのだ ひとりきりの夜、見上げた暗闇 無数に散らばる、鉱石の光 たったひとり、ただひとり その指先がいかに無力でも あの白銀の砂粒は煌々と照るだろう 暗い石炭袋の中であれ燃えるだろう つかの間、一瞬、まばたきのうち 世界が遠方の鉱石の姿を魅せる 暗がりに浮かんだ白銀の帆船 暗がりを照らす赤銅の球体 その中に潜むように今日もまた あの鉱石たちは光を降らせる 輝きは今宵もゆたか 一瞬のまばたきのうちに あなたは不可視の鏡面をかざすのだ 一瞬の宇宙を撮ろうとかざすのだ 星空アーティスト・KAGAYA氏のフォトエッセイを拝読。 途中で言葉の奔流が脳内を行き交い、いてもたってもいられず急遽形にしたもの。 近日、氏の出演するイベントに赴いてきます。 どんな話を伺うことができるのか、今からとても楽しみです。 (18/10/27時点) |
TOP UP:18/11/04 |