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星詠讃歌(哀悼曲)


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(星と語らい 星と共に在った)


彼の軌跡に、数多の銀瑠璃の輝石が煌めく
その背を辿り、その言葉を受け継ぐ者が居る

貴方はきっと あの何万年もの先 遙か彼方に沈む煌めきの横で
仮初めのそれらをパートナーに据え 我ら迷える者達に 流星の壁を立て
いくつかの星めぐりを 点と点、線と線でつなぎ 柵のように締結し
銀盤の上に瑠璃色の鮮やかな矢を放ち 玻璃のような眼で変容を見守っている

在りし日 貴方の佇む黄金の原は
さらさらと 白金色の風の音を奏で
耳の片隅に 燻し銀の鐘の音を鳴らし
或いは
紺碧の深く冥い海溝に ふた振りの尾を持つ白磁の魚を漂わせ
天色のぽかりと空いた巨大な器に 金銀砂子の水を注ぎ
雄々しく猛々しい 土色の蹄と角とが円弧を描き
灼熱の嚆矢は 貴方の行く末の道標となる
その先
くすぶる衝動を抱いた娘に 貴方は灼熱の鉱石を渡して慰め
青銅と白銀の手のひらに 多量の慈愛と憎悪を寄せてやり
亜麻色の実りを携える少女にも 灯台の灯の在処を伝え
大地にまどろむ 琥珀の眼をした獣の王をも導くのか
はたまた
月の根本 朱色の甲羅を持つ 赦されし戦士らに
純白の翼と共にある かつての二人の少年を連れたって
暖かな暖炉を見守る あの黒塗りの目をした優しい獣の家を訪ね
乳白色の毛をたくわえる 草原と風に包まれ育つ獣の寝床へ……旅立つのか

貴方の軌跡を辿りながら
貴方の声を耳にしながら
我ら 迷える者達は
あの高き銀瑠璃の瞬く天にさえ祈る

願わくば
あの灼熱に灼ける瑠璃色が
我らの新たなる道標となることを

願わくば
貴方の立つ黄金の原に
今日も穏やかな白金色の風が在ることを




大変に今更なのですが
敬愛する西洋占星術の一人、ジョナサン・ケイナー氏へ、哀悼の意を込めて。
彼の言葉に、どれほど勇気づけられたか。それは言葉では表しようもありません。
後継者となられた、オスカー・ケイナー氏にも、敬意を込めて。
ご冥福を、お祈りします。






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 UP:17/12/30