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其は凶器/狂喜の翼


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(悪意と良心の狭間)


ゼロとイチの狭間
数式と構文の羅列
組み立てられるもの
世界に根付こうとするもの


ある女の背後 奇声と奇行に明け暮れる幼い肉塊
ある少年の真横 汗と口臭に満ちるくたびれた骨肉
ある男の目先 電子と電磁波に濡れた四角い箱庭
ある少女の足下 肢体に舌を這わせる絶対的な味方
ある老婆の頭上 己を睥睨する眩いばかりの脚光
ある老人の手元 握る丸い指針と三色に揺れる指針

手を伸ばし 目で闇を探り ようやく掴んだ剣
指を滑らせ 耳を四方より剥がし すがりつく盾

電子と電磁 青色に明滅する世界
青色の翼を持つトリが その肩と視界の隅に留まる
羽根を散らし 嘴を上向かせ その喉と指先を導く


さえずれ
さえずれ
うたえ
うたえ
よべ
よべ
その胸と脳髄に潜んだ思考を ルーチンを 世界に牙剥く衝動を

かみつけ
かみつけ
さけべ
さけべ
はけ
はけ
その目玉と指先にしみ込んだ閃きを レポートを 世界を爪弾く暴動を

指先ひとつ 吐息を打つより早く 心音より速く
世界を断絶させ お前の思うまま 欲のまま


ほら呼んでいる
今日も呼んでいる
トリがお前を呼んでいる
ゼロとイチで構成された明滅が
わたしを是非に懐けろと呼んでいる

心臓を模した手垢
火をおこし煙をたなびかせる矢印
電子模様の浮き雲
電磁波に乗り踊る無限と無数の画

トリの羽根が世界に舞う
わたしを満たせ
わたしに焦がれ
わたしを貪れと
電磁波の中で舞っている

トリの翼が世界をなぞる
わたしを欲しろ
わたしに跨がり
わたしを構えと
電子に埋もれなぞられる


観ていたのはお前なのか
魅せられていたのは誰なのか
美しい風景
見事な装飾
輝かしい実績
尊いと謳う言葉
わずか一度のまばたきで たった一夜の素通りで
全てが硝子板の果て
箱庭の奥底
銀河の最奥
ゆめまぼろしのよう

魅せたのはお前なのか
見せつけられたのは誰なのか
悪意の棘
殺意の剣
突き刺す毒針
突き飛ばす友愛
わずか一度の訴えで たった一夜の過ちで
全てが硝子板の果て
箱庭の最前
銀河の爆縮
ゆめまぼろしのよう


羽根という目に見えない手のひらで
お前は今日も転がされるというのか
翼という耳に聞こえぬ雑踏の雑音に
お前は明日も溶け込もうというのか

離れる
離れいく
硝子板の向こう
箱庭の外
共に歩み 共に在ったものたちが
トリに縋るお前を置いていく
ゼロとイチの狭間
イチのさらなる先
修羅と茨に堕ちるうつつに踏み出る


行き交う無限と無数の主張
飛び交う火花と種火の談笑
今日もあの青色のトリが
その肩 視界の隅で
青色の羽根を世界に撒いている




ここ数日、数週間の間、あらゆる方向から聞こえてくる・見えてくるツールへの猛毒。
言葉というのは鋭い剣であり、棘であり、槍であり、
それと同時に、自分以外の第三者を救う・許す事ができる唯一の盾であって、
傷つき、憔悴しきっている誰かを「正義」の名のもとに断罪・私刑しようとする行為は
たとえその硝子板越しの、安全圏からの気楽な野次、安易な口出しであろうとも、
口撃として使う、報道するというのは、恐ろしい事の前触れのような気がして止みません。

一度口から出た言葉が元に戻せないように、
一度文字列にして構成した言葉は、等しくひとつの力を持っているものだと考えます。

だから私は、あの青い鳥が苦手でたまらない。
理性と正義感の葛藤に苛まれ、安易に波に飲まれませんように






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 UP:18/05/07