『壱』 オープニング



其れは、いつの日か過ぎた道
其れは、仲間を集わす合図
其れは、哀愁誘うため息
其れは、汗と涙の結晶
其れは、追い続ける憧憬
其れは、歓喜を招いた旅人
其れは、いつの日か仰いだ星


遠い場所
虚構の園
電子を彷徨う飾りの言葉
電波をさらう無数の数式
得られたものが仮構の栄光であろうとも
画面越しにしか至れぬ領域であろうとも



其処にいた
其処にあった


生き物の息遣い、青々とした草原、駆ける風
駿の竜に飛ぶ竜、土を掘り返す竜に、熔岩に浸る竜
走るもの、剣持つもの、息を切らす果敢な狩人
行き着く先は如何なる場所か

洞窟を突き抜け、海原を臨む、うんと遠くに白い雷雲が見える
眼光、足音、稲妻、遠吠えの二本
暗闇、黒塗り、塗れの食いしん坊
逃げるもの、追うもの、息つく間もない焦燥の狩人
手招く死出の旅の導き手

純白、けぶる、細氷の音
居眠り竜、氷を喰う竜、の竜、遠望を見据えてうたう
吐く息白く、道具もまばら、意志を燃やす貪欲な狩人
雪原に落とす叫びは誰が為に

 ……遠く遠く、うたが聞こえる

熱砂、泥土、憩いの水場
つがいのたち、踊る獲物、回り廻る食のたち
まぁるいオタカラ、ころころころり、秘密裏に奔る緊迫の狩人
彼のものが得られる誉れは如何ほどか

渓谷、河、遙か彼方にあり
襟巻き親分、歌う、そこらに散らばる小柄な竜
甘いの、石ころ、肉片、たけのこ、指折り挟む切迫の狩人
彼のものが齎す恵みは如何ほどか

 ……すぐ近くから、うたが聞こえる

朽ち果てた楽土、眠りに沈む水底、満天の星、虹色の紅珊瑚
声を震わせ名を呼ぶ、いにしえ、澄みきった淡い色の眼差し
混沌を、多色を、一筋の光を、その手に携えた名もなきただの狩人
彼を求めたのは何者か

燃える世界の果て、覚醒せしもの、屍肉の連なり、赤熱に焦がす火薬岩
声を震わせ名乗り出る、いにしえ、淀んだ深い色の眼差し
激昂を、怒りを、一筋の涙を、その手に滴らせる名もなきただの狩人
彼女に追いすがるのは何者か

旅路の果てに何を見る
空白の地図に何を刻む


此処にいた
此処にあった


声も知らぬ集団の脳髄から吐かれた夢であれ
影も知らぬ奏者の指先が放った魔法であれ
我知らず喉奥から解放しきる望みであれ
其処にいた
其処にあった


 ……ふたしかなひとときの娯楽であれど

紡げ、唄え
本能のままに
彩れ、導け
己が生命を燃やして
此処にいた
此処にあった

 ……たしかな脈打つ、有相無相の旅人のパレード


名もなきただの狩人よ
共にうたおう
明々と燃ゆるもの、二十と五つのふたつぼし
これより祝福の夜が花開く

名もなきただの矜持よ
友にうたおう
冥々と燻るもの、まだ見ぬ秘密のたからばこ
より深い情動をその胸に据え




>Next episode... 『弐』イントロダクション



Monster Hunter My Love 2021
wani Presents,

【 この物語はフィクションです 】

<目次>
     オープニング
【!】弐  イントロダクション 【Next】
   参  世界に挑めと獰猛な眺望
   肆  歴歴
   伍  唄
   陸  エンディング
   漆 (ボーナストラック)