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ウィッチャー ゲラルトの手記

 龍獣戯画 : 毒を忘れた毒妖鳥


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ふと気がついたときには、ひとり、森に取り残されていた。
鬱蒼と茂る草や菌糸類、空を覆う樹木で視界は遮られている。ここがどこなのか全く見当もつかない。
のろのろと一歩踏み出すと、少しだけ湿った土が足裏を潤した。頭上にさした影に顔を上げると、赤茶色の木の実が鈴なりに成っている。
くう、と小さく腹が鳴って空腹であることに気がついた。両腕をうんと動かして木の実をもぎ取る。
妙に硬い殻に包まれた実だった。しばらく口の中で転がしていると、すとんと喉に落っこちていった。
……味も何も、分かったものじゃない。でも腹は満たされた。ぼくは……空を仰ぐのにも疲れて、その場で立ち尽くしてしまっていた。

「――、」

誰かがぼくの名前を呼ぶ。名前……そう、「名前」だ。ぼくが    にとって特別な生き物なんだって、分かる証。
ぼくはあの頃、    に名前を呼んでもらっていた。
初めて会ったとき、    がつけてくれたトッテオキ。名前があると、    にそう呼んでもらえる。
手招きされて、近くに寄って、    を背中に乗せて、色んなところ、色んな時間を、たくさん一緒に見て回った。
甘ったるい、真ん中に穴が開いた丸い食べ物。緑の原っぱ、青々とした大きい水溜まり、真っ白な寒い山、乾いた平原に、古びた塔……    のニオイ。
    が行くところには、ぼくよりもうんと大きくて強い生き物も大勢いた。でも、ぼくは    と一緒ならどこに行っても怖くなかった。
    が一緒なら、ぼくはなんにも怖くない。    がいるからぼくは頑張れたし、    が喜んでくれるからなんだって出来た。

「――、」

でも、ぼくは    が誰であるのか忘れてしまった。
ニオイも、声の音も、着ている布の温度も、その名前も。どこで会ったのか、どこで見失ったのか、どうして……ぼくを、ここに置いていったのか。
それだけじゃない、    がつけてくれたトッテオキの名前だって、ぼくはもうなんにも覚えていなかった。
思い出そうとしても頭がぼんやりするばかりで、    の口の動き方さえろくに思い出せない。
なんでだろう、どうしてだろう。名前はもちろん、    のことをなんにも覚えていないのが、なんだかとっても苦しい。
胸のあたりがぎゅうっとして、眼から大粒の雨が落ちた。それでも、ぼくは自分のトッテオキや    のことを何一つ思い出せない。

『なんでかなあ。どうしてかなあ』

どれくらいそうしていただろうか。ぼくはふと、眼の端っこで誰かが草を揺らしたのに気がついた。
飛び出してきたのは、ぼくよりちっぽけな生き物だった。ぴんと立った長い耳と尻尾、大きな水溜まりの表面みたいに光る眼が、とても印象的だった。
小さかったこともあるけど、ぼくはそれが怖くなかった。向こうはそうじゃないらしくて、興味半分怖さ半分みたいな足で、おっかなびっくりに寄ってくる。

『どうしたの。なにか、ぼくにご用事?』

声の大きさには、十分気をつけたつもりだった。
でも、彼ら――後から知ったことだけど、彼らは身を守るためにダンタイコウドウすることが多いらしい――は慌ててまた草むらに隠れてしまった。
どうも、ぼくの声が大きすぎることが問題らしい。眼をキョロキョロさせていると、彼らの中のひとりが意を決したように、ゆっくりとにじり寄ってくる。

『初めまして。どうやら君は、このあたりの「    」とは少し異なる個体のようだ。一体、どこから来たのかね』

……正直、彼が何を言っているのか、ぼくにはよく分からなかった。
「    」、コタイ……よく分からない、思わず本音をぽつりとこぼすと、彼はぎゅっと額に皺を寄せて何ごとかを考え始めた。
無害だと思ってもらえたのか、彼の仲間が彼のあとを追うように草むらを出て近くに寄ってくる。ぼくは、彼らがニャゴニャゴと話し合うのを黙って眺めた。

『行くあてがないなら、この森で暮らしてもいいと思う。ただ他の「    」も生息しているから、天上近くやこの辺りにはいない方がいいかもしれない』
『天上? この辺……』
『縄張りというやつだよ。ふむ、君は野生から人里近くに引っ越しでもした身かな。妙に獣人慣れしているようだし』

ニャゴニャゴと三回目の会議が開かれる。ぼくは『とりあえず今はおなかいっぱい木の実を食べたいなあ』、なんて考えながらぼうっとしていた。

『いくつか、我々の知識を君に分けよう。まずは我々のアジトに……その体の大きさでは入らないか。では、別の穴場にて皆と合流することにしよう』

ぼおおーっ、ととにかく大きな貝が音を立てる。ぼくは初めて見聞きするそれにすっかり驚いてしまって、自慢のまん丸眼玉を瞬かせた。
聞けば、あの貝はもうとっくの昔に中身が空っぽになっていて、彼らは仲間同士で連絡を取るために音を鳴らす道具として活用しているのだという。
よく出来ているなあ、なんて感心しているうちに、ぼくは彼らに案内されるまま彼らの穴場の一つに着いていくことになった。






彼らの名前は、テトルーというそうだ。
それぞれに名前はついていなくて、ずっと長いことこの森で仲間たちと罠や道具を使いながら必要な分だけの狩りをして、ひっそりと暮らしているらしい。
ぼくは、もしかしてと思って    のことを彼らに尋ねてみたけど、彼らは    のことを何も知らなかった。
しょんぼりしたぼくのことを、彼らはその小さな手でたくさんいっぱい慰めてくれた。ぼくは、眼玉から水分を落とすのをやめて彼らと暮らすことにした。

『――ほら、あれがこのあたりの「王」だとも!』

ある日のことだ。ぼくたちの頭上で銀朱の大きな生き物が翼を持ち上げて旋回していた。彼らが教えてくれた森の支配者、空の王だ。
彼らのする話はとても面白くて、そのほとんどがぼくが知らない話ばかりで、ワクワクした。
真っ青な天上を堂々と飛ぶ、空の王の話。力強い角と脚力で荒野を統べる、地の王の話。水底色のビロードみたいな翼を持つ、氷の王の話。
生き物の死骸にしか興味がない、死の王の話。それに、いろんな古き良き生き物に喧嘩を売りたがる、茨の王の話……ぼくは彼らの話に夢中になった。

『ねえ、ねえ。今日は、どんなお話をしてくれるの?』
『ははは、せっかちさんだな。我々の晩ごはんが先だとも。もちろん、君もきちんと食事をとらなくてはな』
『ぼくの好きな木の実、またたくさん食べるんだ!』
『あんな硬いクルミ、よく食べられるものだ。さすが、「    」といったところか』

彼らいわく、ぼくの体は彼らの本拠地に入れるには少しばかり大きすぎるとのことだった。
力を合わせて狩ってきた大きな生き物の肉を両脇にぶら下げながら、ぼくは今日も彼らの穴場の一つ、木立の平地に向かう。
そこは森の北西に位置するちょっとした自然の広間で、いろんな花がたくさん咲いていて、青くちかちか光る蝶なんかもご機嫌に飛びかう秘密の休憩所だ。
彼らはたまに、そこで狩りの疲れをとったり、手に入れた食事の交換会を開くことがあるらしい。

『はじけクルミのことだろう? 彼のブレスには必要な性質が宿されているのだし、当然だ』
『ああ、我々ではあの硬さ故にうまく使いこなせないからな。大したものだ』
『それに食べるならもっと……柔らかくて甘いものがいいな』

……ぼくだって    といっしょにいたときはそんな所で甘ったるい、真ん中に穴が開いた丸い食べ物を食べたり、すきっとした薬を飲んだりもしたんだ。
彼らがふと言葉を詰まらせたり、ぼくの顔をそっと見上げたりするとき……ぼくは、彼らが今日もぼくを気づかっているんだと気づいてやるせなくなる。
彼らはなんにも悪いことはしていない。でも、どうしてもちょっとしたときに考えてしまうんだ。
なんで    はぼくを迎えに来てくれないんだろう、どうしてぼくはこんなところにひとりぼっちでいるんだろう……って。

『……ああ、また泣いているのか。我々では、君のこころを満足に癒すことも出来ない。すまない』

ぼくは、ときどきそうやって    のことを思い出して眼玉から水分を垂れ流すことがあった。そのたびに、彼らはかわるがわるぼくを慰めにやってくる。
彼らが、ぼくのことをよく気にしてくれていることは分かってる。彼らが謝るたびに、ぼくは胸のあたりがぎゅっと苦しくなるのを感じた。
気を悪くしないでほしい、ごめん、すまない……彼らがそう口にするたび、ぼくも眼玉から水分が落ちるのを止められなかった。
きっと、ぼくも彼らも、そんなときにはお互い似たような気持ちになってしまっていたんだと思う。

『――森に、異変が起きている』

……ある日のことだ。ぼくは、彼らが血相を変えて穴場でニャゴニャゴと話し合っている姿を見つけた。
こういうとき、ぼくは話し合いに参加しない。彼らには彼らの決まりごとがあって、ぼくはただのイソウロウだから邪魔をしてはいけないことになっている。
けど、その日は……彼らがひどく動揺していて、それこそ    が強い生き物に挑むときと同じ顔だったから、ぼくは息をするのにも苦労した。

『今まで感じたことのない気配だ。賊竜どももざわついているし、空の様子もおかしい。空の王すら、姿が見えない』
『ここより南の……賊竜どもの遊び場では、食べ残しに手を出している不気味な生き物を見かけたぞ』
『恐ろしい。いったい、古代樹の森で何が起きているのだ?』
『調べてみなければ知りようもないが……』

ぼくは、この森で彼らに世話になっているだけのイソウロウ……部外者だ。ぼくが彼らのために出来ることなんて、きっとない。
でも……それでも。

『……    なら、「力になってやろうぜ」って言ってくれる気がする』

ぼくは決意した。
波乱の芽、潜入してきた何物か、忍び寄る異変、ざわめく木立。彼らの手に負えないことを、彼らの暮らしを脅かすものを、ぼくが必ず調べ上げてみせる。
だって、彼らはぼくを慰めてくれた。穴場を案内してねどこを作ってくれた。おいしいゴハンを一緒に食べてくれた……だから。

『ぼくの背中、今は誰もいないけど。でも、今のぼくはひとりぼっちじゃない。ぼくはなんにも怖くない。きっと、彼らの力になってみせる』

    だって、きっとそう願ってくれる。    は、困っている誰かを絶対に見捨てない二足歩行だったから。
ぼくは、両腕を広げて木立のエリアに飛び立った。






「それ」を見たとき、ぼくは震えあがった。前に、彼らが話していたぼくと同じ個体……同胞たちの死骸が、そこにはたくさん放置されていたからだ。
見たこともない形に、木立が、見慣れた木々が歪んでしまっている。ねじれて、曲げられて、たくさんの同胞が絞め殺されていた。

『ひどい。誰が、こんなこと……』

ぼくは、    といっしょに世界のあちこちを見て回った。どんなところにだって着いていったし、色んな生き物と戦った。
でも、こんなものを見た記憶は一度もない。    がここにいたら、きっとぼくと同じことを言うと思う。
ぼくは、締め上げられて息絶えた同胞たちの死骸を一つ一つ見て回った。
逃れようと空を仰ぐやつ、苦しげに顔を歪めたやつ、紫色の液体を散らして首を折られたやつ……誰もが、死にたくない、と今も叫んでいるみたいだった。
あんまりだ。だってこんなの、あんまりだ。ぼくは、眼玉からぼたぼたと水分を垂れ流しながらその場にうずくまった。
彼らが何をしたんだろう。ただ縄張りの中でゆっくり過ごしていただけなのに。何故、どうして……。

『……、なに?』

思えば、ぼくは異変のことを何も知らずに穴場から出てきたんだった。
森で何が起きているのか、彼ら、テトルーたちがどうしてあんなに動揺していたのか。そもそも何も知らなかった。
足下で、頭上で、おかしな動きがあった。不気味な、ニオイのしない、何か素早いものが走り寄ってくるような音を聞いてぼくははっとした。

『あっ!?』

「それ」は、見慣れた木立の群れだった。あっという間にぼくに這い寄ってきたそれらは、真後ろの同胞たちをそうしたようにぼくの体に絡みつく。

『……! やだ、い、いやだ……!!』

木々に、生命が宿ったかのように。
枝幹に、意思が灯ったかのように。
樹木に、心が籠もったかのように。
息をする間もなく、ぼくは全身を木立に、枝に、古代樹に覆われて、身動きひとつとれなくなった。
彼ら、テトルーたちの助けを呼ぼうと思うのに、口がぱくぱく開くだけでなんの言葉も出てこない。

『だめだ……よんだら、まきこむ』

眼玉から、また水分が落ちていった。ぼくは、どこまでもきつく体を縛り上げられて、息もできなくなって、そのままずるずると意識を失った――

「……ほう。こいつはまだ、生きているな」

――そのときだ。誰かが、何かが、ぼくの足下でそう呟いた。
途端、なんだか凄く熱いものがあたりを飛びかって、ぼくは締め上げてくる木立からすぐさま解放された。
はっとして顔を上げたぼくの眼に映ったのは、このへんでは見たことのない真っ黒な姿をした、見知らぬ二足歩行の姿だった。

『……!』
「もう、捕まるんじゃないぞ」

それは、少しだけ、ほんのちょっとだけ、ニッと笑った。ぼくはすっかりビビってしまって、大慌てでその場から逃げ出した。
さっきの熱いのは、あの二足歩行の手から出されていたみたいだった。立ち去る間際、空の王が吐き出すような真っ赤な火がちらついているのが見えたから。

『どうしよう、どうしよう……!』

空の王の不在にかこつけて、ぼくはあの二足歩行の動きを空から見下ろした。あれは、森のあちこちを一人で回って何か調べものをしているようだった。
……もしかしたら、ぼくと同じことをしようとしているのかもしれない。
ぼくは、あの二足歩行が森の中心、とにかく一番嫌な気配がするところに一人で向かっていくのを見つけて動揺した。
姿を現したのは、    といっしょに戦ったどんな生き物よりも小さい、でも、異様な気配とニオイがする、とても不気味な二足歩行の怪物だったからだ。

『どうしよう、どうしたら……!』

真っ黒な体、枯れ枝みたいな姿形に、頭に生えた木立の角。ぼくは、森に異変を起こしたそれにすっかりビビっていた。
なのに、あの助けてくれた二足歩行はたった一人で、ひとりぼっちで戦いを挑んでいた。きらきらと光る銀色の棒を手に、たった一人で立ち向かっている。
ぼくは、ぼくは……これまで、    とずっといっしょに戦ってきた。    がいたから頑張れたし、怖い生き物にだって立ち向かった。
今、ぼくのそばに    はいない。背中に乗ってもくれないし、ぼくはつけてもらえた名前のことさえ思い出せない。
でも……それでも。

『……! まって、待って!! ぼくも……ぼくもいっしょに、戦う!!』

あの二足歩行と、ぼくは同じだ。森を、テトルーたちを、ぼくたちの暮らす場所を守りたい。絶対に守らなきゃいけない。
一瞬で息絶えた同胞たちのことを、「毒妖鳥プケプケ」の意地を、思い知らせてやりたい。
だから戦わなきゃいけない。    だって、きっと「そうしてやれよ」って言うと思う。怖いけど、嫌だけど、でも……守りたい気持ちに嘘はないから。

「ほう、さっきの……よし!」

二足歩行は、すぐさまぼくの言いたいことを理解してくれたみたいだった。ぼくは、不思議と胸のあたりがかっかと熱くなるのを感じて大声を張り上げた。
長い舌、ぼくの自慢の得物。あの二足歩行の銀色の棒よりうんと長くて、ずっといっしょに戦ってきたぼくの得物。
ぼくは、大声で叫びながら必死に舌を振り回した。
テトルーたちの話では、本当ならぼくは「毒のブレスを吐ける」生き物であるらしいけど、ぼくはそのやり方を「忘れて」しまった。
まるで、    が「忘れていいぞ」って言ったみたいに。「別の『    』に継承させる」って……話したみたいに。

『……! あっ、ありがと!!』

眼つきがおかしくなった賊竜たちがぼくに噛みつく。傷があっという間に増えるけど、あの二足歩行が真っ白な粉を使って、すぐさま出血をとめてくれた。
ぼくは……今度こそ、    のことを考えるのをやめた。思い出そうとするのをやめた。自分の名前のことも、振り返るのをやめた。
だって、目の前であの二足歩行が戦っている。遠くから、近くから、テトルーたちが救援の貝を吹く音が聞こえる。
守らなきゃいけないんだ。守って、また、いっしょに彼らとこの森で暮らしていくんだ。……だから。

「さあ、在るべき場所に還って貰うぞ。レーシェン!」
『いっけぇぇぇーっ!!』

ぼくは……ぼくたちは、最後の力を振り絞って、あの黒い二足歩行にそれぞれの牙を突き立てた。おぞましい叫び声を上げて……異変の元凶は、灰になった。






『あのひと、行っちゃったね』
『ああ。律儀なものだ』

あのあと、ぼくはテトルーたちと合流してあの助けてくれた二足歩行のことを話し合った。
ぼくを助けてくれたこと、異変の元凶を退治してくれたこと。用事が済んだから……すぐにモトノセカイに帰るんだ、ってことも。
ぼくたちは、話し合って彼にトッテオキのオタカラをあげることにした。助けてくれたお礼に、守ってくれたお礼、格好よくいっしょに戦ってくれたお礼に。
でも、彼はオタカラを受け取らないでモトノセカイに帰っていった。
ぼくたちの知らないところであの怪物退治を手伝ってくれた別の二足歩行に礼をしてくれ、って、たったそれだけを言い残して。

『あのね、ぼくね、もう少し……この森にいようと思うんだ』

銀色の棒一本で、森を守ったたった一人の二足歩行。あの鋭い、空の王の爪みたいな眼つきのことを、ぼくは忘れることはないだろう。
テトルーたちは、ぼくの提案に最初凄く驚いたみたいだった。毛を逆立てて、眼をまん丸にして、固まっていた。
でも、ぼくの決意が変わらないものだって気がついたら……『うん』って皆で賛成してくれた。

『本当なら、君はその    のところに戻るのが一番いいと話していたのだ。だが……』
『ううん。いいんだ。    のことは今でも大好きだけど……ぼくには、新しい目的が出来たから』

あの二足歩行の後ろ姿が忘れられない。    とは違う眼をしていたけど、何かを守ろう、戦おうって頑張る姿は……誰より、何より格好よかった。
ぼくもいつか、そうなりたい。
ぼくを助けてくれたあの二足歩行みたいに、救ってくれたテトルーたちみたいに、ぼくも、この森を守る強い生き物になりたい。
空の王みたいに上手くは飛べない。地の王みたいに力強くは走れない。氷の王みたいに優雅じゃないし、死の王みたいになんでも食べられるわけでもない。
ましてや、茨の王みたいに誰も寄せつけないほどの力があるわけでもないんだ。……でも、それでも。

『あのね、ぼくは    のこと忘れちゃったけど。でも、いっしょにいたこと、戦ってきたことまで、忘れたわけじゃないんだよ』

ぼくは、大好きな    のことも、自分の名前も忘れてしまった。でも、いっしょに過ごした記憶までなくしたわけじゃない。
守ろう、守りたい、そんな気持ちだってちゃんと分かってる。    やあの二足歩行みたいに、仲間や、困っている誰かを守れるようなものになりたい。
それがぼくの――「毒妖鳥プケプケの意地」なんだ。

『だから、まだ頼りないかもしれないけど。うんと頑張って強くなるから、この森を守ってみせるから。それまで、ぼくといっしょにいてくれる?』
『もちろん……もちろんだとも! 誰が反対すると思う、君はもうとっくの昔に、我々のオトモダチじゃないか!!』

ぼくたちは、すっかり元通りになった晴れ渡る空の下で笑った。いつしか、頭上、天の領域に、あの空の王のまばゆい銀朱色が見えた。




――古代樹の森の奥、北西の木立のエリアに、歴戦の個体の毒妖鳥が暮らしているという。
調査員を襲うでもなく、ただ森を闊歩する彼の背には、ごく稀にフワフワクイナならぬ森の虫かご族が乗っていることがあるという。
彼と彼らの関係性は、未だ解明に至っていない。





(あとがき)

モンハンワールドのコラボクエスト『特別任務:古代樹の森の異変調査』と、モンハンストーリーズの合わせ技ネタです。
件のクエスト、当方のデータではプケプケさんが一回も毒ブレスを放ってくれなかったことが作成理由(…)
そこも含め、ストーリーズにおける「伝承の儀」で絆遺伝子を継承したモンスターがその後どうなるのか…という想像も加味しました。
後者のネタは【ヤツカダキ恋奇譚】、夜一の過去編で登場する「ライダーを喪ったネルスキュラ」に通じるものがあるかも。

プケプケサンはストーリーズ2の主戦力でもありました。ライズに登場する彼らは、新大陸から流れ着いた個体なんだそうです。
新天地でも、木の実を堪能しながら彼ららしくのんびり過ごしてくれていたらいいなあと思います。
なおイベクエ中のゲラルトさんは仲間思いのイケオジでした。セ、セクシー。






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 UP:23/02/09