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 ■■ (落蘇)


濃紫色に熟れた泪型の実が
落葉の季節に掛け
優しく美しく
流るる水滴を身に蓄えていく

あなたは遠い西の国から
真実を告げる為に訪れたのか
それとも良い語らいを求め
食卓の上に慎ましく座すのか

その味を口に含むとき
わたくしはどれほど幸福を覚え
また夏の明日に会える日を
或いは秋の昨日に手に採る日を
どれほど希望としていたでしょう

あなたの数多くある仲間らが
今宵も大きく膨れたその身を
あらゆる形、味、色として
食卓の上に据えるのです

濃紫の実を
凛と座すのです


(その一部に毒があることを)
(どれだけの民が識るだろう)

(C)Lis,wani/Confeito
撮影:18/09/15(wani)


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